「意思決定の速さ」を見せた 「JX・東燃ゼネラル」連合の強みとは

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   石油元売り首位のJXホールディングス(HD)と3位の東燃ゼネラル石油は2016年8月31日、17年4月1日の経営統合で最終合意したと発表した。今秋、公正取引委員会の審査をクリアしたうえで、12月に両社がそれぞれ株主総会を開き、経営統合を正式決定する運び。国内ガソリン需要が減少する中、統合で経営効率化を進め、統合後3年以内に年1000億円の「シナジー効果(コスト削減)」を目指す。2位の出光興産と5位の昭和シェル石油の合併計画が暗礁に乗り上げているのとは対照的に、再編によって首位固めを図る考えだ。

「石油業界は国内需要の減少という構造的な問題に直面している。国際的な競争力ある集団として企業価値を最大化し、自社単独でできない変革を実現する」。

   JXHDの内田幸雄社長は8月31日の記者会見でこう述べ、統合の狙いを強調した。

  • JXホールディングス(HD)と東燃ゼネラル石油が経営統合で合意(画像はJXホールディングスの公式サイトより)
    JXホールディングス(HD)と東燃ゼネラル石油が経営統合で合意(画像はJXホールディングスの公式サイトより)
  • JXホールディングス(HD)と東燃ゼネラル石油が経営統合で合意(画像はJXホールディングスの公式サイトより)

経営統合で最終合意

   内田氏は、統合後の新たな持ち株会社「JXTGホールディングス」の社長に就任する。会長にはJXHDの木村康会長、副社長に東燃ゼネラルの武藤潤社長がそれぞれ就く。3氏が代表権を持つ。東燃ゼネラルは売上高でJXHDの3分の1にとどまるだけに、今回の再編は「JXHDによる東燃ゼネラルの吸収合併」の色彩が濃い。JXHDの2トップが新会社にそのまま横滑りするような人事にも、それを如実に表している。木村氏は「業界が置かれた困難な状況に立ち向かうため、未来志向で双方が強い変革意識を持とうという思いを新社名とその人事に反映させた」と語った。

   具体的な統合手法は文字通りの吸収合併だ。JXHDと東燃ゼネラルが株式交換した後、JXHDにぶら下がる事業子会社「JXエネルギー」が東燃ゼネラルを吸収合併する形をとる。株式交換の比率は東燃ゼネラル株1株に対しJXHD株2.55株を割り当てる。統合後のJXエネルギーは「JXTGエネルギー」に衣替えする。

   ただ、業界再編の「先輩格」といえる大手銀行(3大メガバンク)を眺めてみれば、「吸収合併型」の三菱東京UFJ銀行や三井住友銀行に対し、「対等合併型」のみずほ銀行は、経営統合後も旧3行出身者による連綿と続く主導権争いにエネルギーが割かれ、業績にも悪影響を及ぼすという弊害に苦しんだ。統合時の「上下関係」がはっきりした方が、社内抗争のような余計なことに力をとられず互いにすっきりと未来に向かって仕事ができるという一面がある。

「お家騒動」で出光の「統合」は頓挫状態

   早速、意思決定の速さも見せた。東燃ゼネラルの武藤社長は記者会見で、人員削減について「組織がダブっているところがあり、数百人規模を検討している」と話した。また、製油所の統廃合についても「速やかに検討を始める」と述べ、痛みを伴う改革に正面から取り組む考えを強調した。国内の石油製品需要は過去10年で23%減少し、今後も年2%程度の減少が続くと見込まれるだけに改革は待ったなしなのだ。

   公取委は「JX・東燃ゼネラル」と同時に、出光興産と昭和シェル石油の統合についても審査し、その結果を今秋に公表する見通し。だが、出光創業家が合併に反対しているため、「出光・昭和シェル」は頓挫の可能性も出てきている。業界の現状では、「1強」より「2強寡占」の方が競争政策上は問題があるため、JX・東燃ゼネラルの審査には追い風とみられている。ただ、審査をクリアするには、事業の一部を競合企業に売却するなど競争力を弱める措置がとられるとみられている。

   問題の出光は、創業家と経営陣の争いが泥沼化し、出口が見えない。創業家が反対理由に「社風が違う」などを挙げているが、もはやそうしたことを議論し解決策を探る時期は過ぎたと言わざるを得ないほど、事態はこじれている。当初強気だった出光経営陣内の一部でも悲観論が聞かれ始めたという。創業家側が保有する議決権株は、合併などの重要事項提案に拒否権を発動できる3分の1超。最後はこの拒否権がものを言うだけに、昭和シェルとの統合には赤信号が灯っている。

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