石川県穴水町の町立図書館が、歴史や民俗学、「芥川龍之介全集」の初版本などの価値を知らずに約2000冊を破棄していたことが分かり、寄贈者に謝罪したと報道され、注目を集めている。
ネット上では図書館に対する激しい批判が相次ぐ一方で、情報が少なすぎて全体像が理解できない、とし、「騒ぐほどの貴重な本なのか?」「寄贈本の扱いは図書館の裁量だろ?」といった疑問も噴出する事になった。J-CASTニュースは、町の教育委員会に取材し、実情を探った。
「本の価値が理解できない奴に本を触らせるなよ!!」
NHK金沢放送局の報道(2016年9月5日)などによれば、漆器や民俗学の研究者の男性が2005年に2179冊の図書を町立図書館に寄贈した。その2年後の07年3月に能登半島地震が起こり図書館が倒壊し、仮の図書館に蔵書を移動する際に「利用頻度が低い」ものを処分し、男性が寄贈した2179冊のうちの1873冊を破棄した。男性は16年7月に図書館を訪れた際に寄贈本がないことに気づいた。破棄された図書の中には、日本民俗学会の会員限定の会報や、亡くなった妻が所有していた「芥川龍之介全集」の初版本など、入手が困難なものも含まれていた。穴水町教育委員会は男性に直接謝罪したほか、町の広報誌におわびの文章を掲載した。破棄した当時の職員は、
「図書の貴重さを理解していなかった」
と話したという。
これに対しネット上では町立図書館に対する激しい批判が噴出し、
「ふざけんなこらーーーーーー!!!!」
「正直これは目を覆いたくなるな...ただでさえ寄贈資料の扱いってデリケートなのに」
「本の価値が理解できない奴に本を触らせるなよ!!ほんとに!!」
などといったことがツイッターでつぶやかれた。ところが批判が増えていくにつれ、情報が少なすぎて本当に図書館だけが悪いのかわからない、という意見が増え始めた。ネットでは、
「寄贈した段階で、その図書をどうするかは図書館の自由。だから、処分した事に何も問題は無い。図書館側が謝罪する必要性すら無い。処分されるのが嫌なら寄贈するなって話」
「民俗学会の会報とか芥川龍之介全集の初版本とか、確かに貴重だろうけど当該図書館の蔵書としてふさわしいものなのか?」
「田舎の図書館に2000冊も寄贈された本を維持していくための予算がどれだけあったのかを検証もせずに、職員叩き、穴水町叩きを始めるのは何の解決にもならない。本は閉架書庫に無限に所蔵できるわけではない。大学や県立図書館に移転すべきだった」
などといった意見が出た。
「事前に寄贈者との取り決めをしたい」と担当者
J-CASTニュースは9月6日、同町の教育委員会に取材した。まず、破棄した職員たちは既に退職しているため詳しいことは分からないが、現状は3万1000ほどの蔵書があり、定期的に本を破棄していて、破棄の基準は利用頻度が低い事と、古くなって本の体をなさなくなった場合と、ページが抜けたりして読めなくなった場合などだという。今回のような専門的な書籍は、読まれる事は極めて少ないそうだ。また、能登半島地震の影響で破棄した本の多くは、男性からの寄贈本だったが、もともとこの男性が本を持ち込んだものであり、寄贈を依頼した事実はなく、寄贈された本をどう扱うかは図書館側の裁量というのが普通だと思っている、とした。
また、町立図書館を担当しているのは正規職員で、司書の資格を持っている場合とない場合があるそうだ。なぜ2000冊以上の専門書を含む個人所有の本を受け入れる事になったのかは「わからない」。寄贈本を破棄する場合は、寄贈した人に連絡するかについては、「そういう場合もある」としている。今回の騒動で図書館は謝罪した訳だが、今回の反省を踏まえ、二度と同じ過ちが無いようにパソコンを使った図書の管理の徹底と、職員教育の強化を図り、
「寄贈していただける場合は、本をどう扱っていくか事前に取り決めのようなものを結ぶ、ということも必要だと考えています」
と担当者は話していた。