「先輩、いい人なんだけど、ちょっと体臭が...」「私、あの人が近くにいるだけで耐えられない」。レストランで、数人の女性がこんな会話をしているのを耳にした私、男性記者は思わずドキリ。
もしかして自分も、体臭で同僚に迷惑をかけているのでは――。働き盛り世代の男性にとって、今や職場でのにおい問題は対岸の火事ではない。
強烈な「ミドル脂臭」実は健康悪化のサイン
「突然上司に呼び出されて別室で自分の体臭の事を聞かされました......私自身はそんな臭気になどまったく気がつかず、気にも留めてなかったのですが、隣りの席に座っている方、また私の席の後ろを通る時などそのにおいが鼻につく、といった状況だったようです」
体臭ケアを手掛ける五味クリニック(東京都新宿区)のウェブサイトに寄せられた、悩み相談の文章の一部だ。平たく言えば、職場で「くさい」と指摘され、制汗スプレーをはじめあれこれと対策をとったが、効果はなかった。病院で診察を受けたが、異常はない。何より自分で自分の「くささ」がわからず、何をすれば解決するかわからず困っているという。相談者が男女どちらかは不明だが、相当深刻な様子だ。
職場におけるにおい問題は、どちらかというと男性、主に中高年への風当たりが強い。最近では加齢臭よりも、30~50歳代による「ミドル脂臭」が最も強烈で、周りに嫌われるくささと言われる。「ウっとくる」「雑巾のよう」「鼻につく」と、人によって感じ方が違うが不快なのには変わりない。
先述の五味クリニックの五味常明院長は、2016年8月30日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で、ミドル脂臭が強いのは疲労で健康が損なわれているためだと説明した。また、ビジネスマンが体臭を気にすると、「自分は人に迷惑をかけているんじゃないか」と自信を失い、対人関係に積極性がなくなる。においそのものは周囲にとって迷惑なので、社員の士気にも影響する。こうしたマイナス相乗効果が、職場にもたらされると指摘した。
問題なのは、職場で相手に面と向かって「あなたは、くさい」と言いにくい点にある。そのため最近では、全社的ににおいに関する理解を深め、いわゆる「スメハラ」(スメルハラスメント)対策につなげる試みがみられる。