小売りや外食業界で、値下げや低価格商品を投入する動きが急速に広がっている。消費者の節約志向が高まっていることが最大の要因といえる。ここに来て円高傾向が強まっており、企業にとっては値下げに動き安くなっていることも背景にありそうだ。
大手スーパーの西友は2016年8月25日、食品や日用品などの価格を半年間据え置く「プライスロック」キャンペーンの第7弾を開始した。15年3月に約200品目から始め、徐々に対象を拡大。今回は新たに509品目を加えたことで、対象商品は計1300品目を超え、過去最多となった。さらに、新しい対象商品のうち、6割以上の324品目は平均約5%値下げした。同社は「節約志向の高まりを受けた取り組み」と説明する。
節約志向の高まりと円高傾向
値下げに動く企業は西友だけではない。この春、流通業界全体を驚かせたのがカジュアル衣料品店「ユニクロ」の値下げだ。ユニクロは2014年、2015年と2年続けて値上げを実施した。円安が進み、海外生産の費用が上昇したことなど「やむを得ない値上げ」(ユニクロ)だった。しかし、この結果、「割安感」というユニクロ本来の特色が薄まり、客足が遠のいた。業績は悪化し、耐えきれなくなったユニクロは商品の値を引き下げ、値上げ前の水準に戻したのだ。
一方、牛丼大手の吉野家は16年4月、一時は販売を停止していた「豚丼」を4年4か月ぶりに復活させた。価格は「並盛り」で、主力の「牛丼」より50円安い設定。また、たばこ販売大手のフィリップモリスジャパンは6月、主力ブランド「ラーク」について、財務省への値上げ申請を取り下げた。当初は8月から41銘柄を1箱10円引き上げる予定だった。
マーケティングの専門家は「株価の下落に伴い、消費者は景気の悪さを実感して、今までよりいっそう節約志向を強めている。客数減を食いとめるには、値下げするしかない状況になっている」と分析する。
ちょうど外国為替市場では円高に傾いており、輸入する原材料価格も下落傾向にある。ほんの少し余裕ができた多くの企業にとって、値下げに動きやすい環境になっていることも大きいとされる。