はしかがうつっても、感染経路の特定は困難
感染させたいと思って感染させれば傷害罪にあたる。「感染させる可能性はあるが感染させたくないと思っていたけれども結果的に感染させてしまった場合」は、傷害罪よりも刑が軽い過失傷害罪になる。
今回の2つの事例を考えてみると、いずれも患者はイベント参加当時、医師の診断を受けておらず、自分がはしかに感染していたと分かっていなかった可能性が高い。ただ、発熱や発疹といった初期症状はすでに出ていた。このため、もし他人に感染させてしまった場合、
「(患者自身では)はしかかどうかはわからなかったとしても、他人の身体の生理機能を害する病気を持っていると認識しているので、傷害罪や過失傷害罪が成立すると言えるでしょう」(岩沙弁護士)
一方、会場には数百、数万規模の人が詰めかけていたうえ、はしかは感染から発症までに約10日の潜伏期間がある。他人が感染したとしても、別の人から、別の日にうつされた可能性があり、岩沙弁護士によると「感染経路や原因などを特定することが困難」。罪に問うには「この人からこの時うつされた」といった立証が必要だが、それは「非常に難しいでしょう」という。
はしかは有効な治療法がなく、症状を和らげる対症療法しかない。感染拡大を防ぐためにも、また、もしかしたら罪に問われる可能性を考えても、疑わしい症状が出たら早めに医療機関にかかり、医師の指示に従うようにしたい。
国立感染症研究所は8月25日、特に16年ははしかの患者報告が続出しているとウェブサイトで発表した。ワクチンを受けていなければ、早めの接種を検討するよう呼びかけている。