大ヒットゲームシリーズ「桃太郎電鉄」の新作が5年ぶりに今冬登場すると、任天堂が2016年9月1日に発表した。「任天堂3DS」用ソフトになる。
このゲームシリーズに関しては、生みの親のさくまあきらさんとゲームメーカーのコナミデジタルエンタテインメントが揉めに揉め、さくまさんはツイッターで「さよなら、桃鉄」とつぶやいていた。新作は二度と出ないだろうと思っていたファン達は「嬉しすぎて涙が出た」とネット上で歓喜の声を上げているが、どうして新作が作られたのだろうか。
作者とコナミがこじれ、もう新作は出ないと...
「桃鉄」はもともとゲームメーカーのハドソンのもので、1988年に任天堂のファミコン用ソフトとして発売された。2010年まで21作の家庭用ゲーム・携帯型ゲームソフトがリリースされたほか、携帯電話やスマホのアプリも登場した。そのハドソンが05年に資金繰りの悪化からコナミの傘下に入り、11年にコナミの完全子会社化、12年にコナミデジタルエンタテインメントに吸収合併された。11年以降、「桃鉄」の家庭用ゲーム・携帯型ゲームソフトのリリースはなく、12年2月に出した携帯電話用アプリ「桃太郎電鉄TOKAI」が最終作品となっていた。「ニンテンドーWii」向けの「桃太郎電鉄2012(仮)」の開発も進んでいたようだが、日本全国の鉄道を双六スタイルで旅するというゲーム内容から、東日本大震災に配慮し11年4月に開発中止が発表された。
どうしてこれほどの人気シリーズのリリースが止まったのか。ゲーム業界内では吸収されたハドソン内の開発スタイルと、コナミの開発スタイルの違いが影響したのではないかという声が大きい。さくまさんはツイッターなどで、実在の人名をあげてコナミ批判を繰り返してきた。「ニコニコ生放送」では11年12月11日、コナミは息苦しいと「桃鉄」開発のトップ4人のうちのうち3人が辞めて行った、と説明し、
「『桃太郎電鉄 TOKAI』を最後にシリーズは終了する」
と語ったり、12年9月1日には自身のツイッターで、
「コナミに○○という男がいるかぎり、桃鉄、桃伝はつくらないよ」(編集注:○○は実名)
などとつぶやいた。15年6月2日には、
「コナミから何の連絡もない。こんな調子でずっとほったらかされた。ここに桃太郎電鉄は、正式に終了します。すべてコナミの○○が握り潰しました」(編集注:○○は実名)
そして、こんな提案もしている。
「桃鉄の権利をコナミから買い取って、ほかのメーカーから発売すればという意見もある。だから、コナミにパーセンテージ払って発売することを提案。コナミの○○は上に聞きますと言いながら、その後も要求した返答なし。だから桃鉄を終了」(編集注:○○は実名)
「任天堂さんの発表なので任天堂さんに聞いてください」
こうしたさくまさんの発言はネットで大騒ぎになり、コナミはそれに対し15年6月3日に公式ホームページで、「桃鉄」シリーズは当社が長年かけて育ててきた大事なタイトルだから今後も作り続けていきたい、としたうえで、
「次回作をどのような形で提供できるかについては、さくまあきら氏と話し合いを続けておりますが、残念ながらまだ結論が出ておりません」
と説明した。さくまさんは翌日の6月4日にツイッターで、コナミは「桃鉄」を長年かけて育ててきたコンテンツだと嘘をついている、とし「さよなら、桃鉄」と完全終了を表明した。
こうした経緯から新作はもう出ないと諦めていたファンは、新作「桃太郎電鉄2017 たちあがれ日本」が今冬リリースされるというニュースに、
「待ってました 嬉しい 私の地理の知識は桃鉄で培われました(地名とか特産品)子供たちにやってもらいたかったんです」
「ありがとうございます!!!ありがとうございます!!!!!!」
「まさか、復活するとは、涙が出ました」
などとツイッターで大騒ぎする事になった。
任天堂が新作を発表したのはユーチューブにアップした「Nintendo 3DS Direct 2016.9.1 プレゼンテーション映像」。さくまさんがコメントを寄せていて、
「『桃鉄』を出してほしいというリクエストがこれだけ多いと、私も天岩戸から出て行かなければならなくなりました。長らく待たせて本当にすいません」
と説明。新作には東日本大震災、熊本地震の復興の願いが込められているのだという。
しかし、任天堂が今回発表した新作のクレジットには、さくまさんとコナミの2つが並記されている。あの「さよなら、桃鉄」騒動から1年以上がたったが、両者にはいったいその間に何があったのだろうか。コナミに16年9月2日にJ-CASTニュースが話を聞いたところ、
「任天堂さんの発表なので任天堂さんに聞いてください」
と同社広報は回答した。任天堂に質問すると、
「発表したことが全てです」
と同社広報は説明した。
さらに、ゲームソフトをどのメーカーが開発するのか、また、どの会社が新作の「桃鉄」を発売するのかも、現時点では答えられないということだった。