夜のお菓子「うなぎパイ」が、JR名古屋駅構内にある売店という売店からすべて消えた。
うなぎパイは、静岡県浜松市の春華堂が1961年から製造・販売。独自の「うなぎパウダー」をパイ生地に練りこんで焼く、パイ職人の手わざから生まれる洋菓子で、「浜名湖名産」として知られている。
東海キオスク「他のおみやげ品との兼ね合い...」
JR名古屋駅といえば、うなぎの養殖で知られる浜名湖が近く、銘菓「うなぎパイ」は駅構内の売店「キヨスク」で、それこそ当たり前のように売られていた。そのうなぎパイが、突然のように「消えた」というのだ。
キオスクでは2016年9月2日時点で販売されておらず、東海キオスクによると、うなぎパイの取り扱いをやめたのは2016年2月からで、現在は名古屋駅の新幹線地下街ESCA内にある「GIFT KIOSK」で販売しているという。当時、貼り紙などによる告知はしなかったが、「お客様からのお問い合わせもあって、店員には『GIFT KIOSK』に案内するよう指導しました」と話している。
うなぎパイがJR名古屋駅から「消えている」との情報は、2016年8月30日、ツイッターへのある投稿をきっかけに、瞬く間に広がった。
「ホントにないの? どこで買えるの?」
「(うなぎパイの製造・販売元の)春華堂とJR東海とで何かあったの?」
などと、不安げな声が寄せられ、騒然となった。
情報拡散のきっかけとなったツイッター主は、春華堂のお客様係に自ら問い合わせたようで、
「JR名古屋駅売店からのうなぎパイ消滅の件、春華堂への問い合わせで真相判明。東海キヨスクの方針変更で名古屋駅の売店では愛知県の名産品のみ取扱うこととなり、やむなく撤収となってしまったよし」
と寄せた。
これに、インターネットでは、
「そうなんだ...。ま、確かにうなぎパイは静岡だもんね」
「赤福はいまだに売ってた。なんだか釈然としないでもないなあ...」
「『名古屋みやげ』に特化するという東海キヨスクの方針も一理ある」
「今まであれだけ需要があって、半ば名古屋みやげにもなってたんだから、やめるにしてもそれなりの告知は必要じゃないの」
といった声がある。
東海キオスクは、うなぎパイの販売を取りやめた理由について、「地元の名産品を置きたいことはありますが、他のおみやげ品との兼ね合いや販売状況をみて(商品を)入れ替えました」と説明。「うなぎパイの売り上げがよくなかったわけではありません」ともいう。
しかし、「名古屋駅から完全になくなっているわけではありません」と言い、「うなぎパイは『GIFT KIOSK』に集約して、お客様のニーズにお応えしています」と話した。
ちなみに、東海キヨスクのホームページにある「駅別売れ筋お土産ランキング」で、JR名古屋駅の第1位は赤福餅。2位が「ゆかり」(坂角総本店)、3位が「ゆかり名古屋黄金缶」だった。「うなぎパイ」の名はなかった。
製造・販売の春華堂「販売再開に向けて協議中」
一方、うなぎパイの製造・販売元の春華堂は、2016年9月2日のJ‐CASTニュースの取材に、「(ツイッターによる情報の拡散で)お客さまからのお問い合わせが相次いでいます」と、対応に追われた。
春華堂によると、うなぎパイは1日20万本を生産しており、「インバウント需要もあって、15年は大きく売り上げを伸ばしました」という。それが、JR名古屋駅構内での取り扱いを休止して以降は大きく売り上げを減らし、「JR名古屋駅での取り扱いは30年以上の実績があり、(売り上げの)かなりのウエートを占めています。非常に大きな打撃を受けているのは事実です」と話す。
同社では、今回のツイッターなどでの情報拡散が憶測を呼び、なかには誤解を招く表現があったことから、急きょコメントを発表。「休止後の反響は予想以上に大きく、多くのお客様から名古屋駅でも購入したい、とくに浜松駅に停車しない『のぞみ』をご利用のお客様に多大なご迷惑をおかけしており、お困りの声も多くお寄せ頂いております」としている。そのうえで、「弊社としてもお客様のご要望に感謝し、そのお声にお応えするためにも販売再開を望んでいる状況であります。引き続き1日でも早く再開できるよう努めてまいります」と、販売再開に向けて、東海キオスクと協議中であることを明かした。
なお、うなぎパイは、7月からは東京‐大阪間を走る新幹線「のぞみ」と「ひかり」で車内販売(一部)しているほか、現在はJR名古屋駅・新幹線地下街ESCA内の「名古屋みやげ処」やジェイアール名古屋タカシマヤの和洋菓子銘菓百撰(地下1階)などで販売している。