肥満ががんの発症リスクを高めることは多くの研究で明らかだが、世界保健機関(WHO)のがん専門組織「国際がん研究機関」(IARC)は2016年8月24日、新たに胃がんなど8種類のがんが肥満によってリスクが増加することがわかったと発表した。
この研究は、米医学誌「ニューイングランド医学ジャーナル」(電子版)の同日付号に掲載された。
過剰な脂肪が体内に炎症を起こし、がん細胞を増殖させる
研究チームは、肥満とがんに関する論文を1000件以上調べた。今回、新たに肥満が主要な原因の1つと認定されたのは、胃がんのほかに肝臓がん、胆のうがん、すい臓がん、卵巣がん、甲状腺がん、脳腫瘍の1種である髄膜腫、血液がんの1種である多発性骨髄腫の8つだ。すでに2002年の時点で、結腸がん、食道がん、腎臓がん、乳がん、子宮体がんの5つが肥満との関連が認定されているから、これで合計13種類になった。
論文では、これらのがんが肥満によってリスクが高まる理由として次の点をあげている。
(1)過剰な脂肪によって、体内に炎症が促進される。炎症は健康な細胞を損傷させ、がん細胞発生のもとになる。
(2)過剰な脂肪によって、女性ホルモンのエストロゲンや男性ホルモンのテストステロンが過剰に分泌され、ホルモンバランスが崩れる。たとえば、エストロゲンの増加は乳がんの発症を促進させる。
(3)過剰な脂肪によって、インスリンが過剰に分泌される。インスリンが増加すると血糖値が高まり、動脈硬化が進み、副腎が疲労するなど様々な血管組織や内臓に障害が起こる。特にがん細胞の増殖がいっそう進む。
研究チームでは「体重を減らすことが一番ですが、多くの人にとってそれは難しいことです。少なくとも今より体重が増えないように努力すれば、これらのがんを減らす手助けになるでしょう」とコメントしている。