「貧困女子高生を扱ったNHKの報道は、やらせ、捏造だ」。そんな論陣を張っていたネットニュースサイト「ビジネスジャーナル」が2016年8月31日、NHKに捏造はなく、事実誤認をしたのは自分達の方だったとして謝罪文を発表した。
今回の騒動が大きくなった理由には、「貧困」とはどんな状態なのかという理解が、人それぞれで違っていることや、貧困家庭だという女子高生に関するデマが乱れ飛んだことが挙げられる。さらに、NHKの今回の番組に関する「公式コメント」がはっきりメディアで伝えられなかったことの影響もあるようだ。J-CASTニュースは、改めてNHKに公式コメントを求めた。
一時、片山参院議員も「参戦」
騒動の発端は、NHKが16年8月18日夜に放送したニュース内での「子供の貧困」特集。両親が小学校5年の時に離婚し、アルバイトの母親と2人で暮らしているという高校3年生の女子生徒が実名で登場した。部屋にはエアコンはなく、暑い夏は首に保冷剤を撒いて凌いでいる。自分が貧困家庭だと分かったのは中学校のパソコンの授業で、自宅にパソコンがないため授業に付いて行けなかった。心配した母親が1000円ほどのキーボードだけを買ってくれて練習をした。絵を描くのが大好きで専門学校に進学したいが入学金の50万円が払えない。現在は就職するか職業技術校に行くか迷っている、という内容で、横浜市で学生たちが企画したイベントに登壇し、子供の貧困問題について訴える姿が放送された。
この放送を見た人たちはネット上で、女子高生の部屋は物で溢れていて、2万円近くする画材道具が見つかった、などと騒ぎ出した。女子高生のツイッターには1000円以上もするランチを食べたという報告が幾度もあり、有名グループのコンサートや、アニメイベントに行ったり、同じ映画を何度も見たとのつぶやきを発見したとし、「これを貧困というのか?」「自分よりも裕福」と大騒ぎになった。片山さつき参議院議員も問題視し、8月20日、ツイッターで、このNHKの特集を見て、「このお嬢さんの夢は絶対叶えてあげたい」と心配したが、事実が分からなくなったとし、「NHKに説明をもとめる」と宣言した。片山議員は8月22日、ツイッターで、
「NHKの公表ご了解の点は『本件を貧困の典型例として取り上げたのではなく、経済的理由で進学を諦めなくてはいけないということを女子高生本人が実名と顔を出して語ったことが伝えたかった。』だそうです」
と報告したが、「事実関係」の確認という意味では進展はなかった。
ネット上では、他にも様々なデマが飛び交い、例えばエアコンが無いというのは嘘だとしてアパートに設置された室外機の写真が出回ったり、30万円のアップル製のパソコンを持っているとか、親族とされる人物が大量の札束を持っている写真がアップされた。