他人が吸ったタバコの煙にさらされる受動喫煙の人は、肺がんにかかるリスクが約1.3倍も高まるという研究を国立がん研究センターの研究班がまとめ、2016年8月31日発表した。
2020年の東京五輪では、IOC(国際オリンピック委員会)は「禁煙オリンピック」を掲げているが、日本の受動喫煙対策は「世界最低レベル」といわれ、公共施設や飲食店などでの屋内全面禁煙対策の遅れが問題になっている。研究班では「遅きに逸した感があるが、今回の研究成果をもとに全面禁煙の法規制を進めることが必要です」と訴えている。
受動喫煙で死亡する人は年間1万5000人も
研究班は受動喫煙と肺がんの関連を調べた426件の論文の中から9件を選び、詳しく分析した。その結果、受動喫煙のある人はない人に比べ、肺がんにかかるリスクは1.28倍高いことが明らかになった。これまでも受動喫煙の危険性は指摘されていたが、個別の研究では科学的根拠が薄いとされてきた。複数の論文を評価することで、肺がんリスクを高めることを統計学的に証明できた。
今回の成果をふまえ、国立がん研究センターが発表している「肺がんのリスク評価」で、受動喫煙は「ほぼ確実」から「確実」に変更され、「日本人のためのがん予防法」の指針でも「他人のタバコの煙をできるだけ避ける」から「避ける」に修正された。
今回の研究とは別に、厚生労働省研究班も、受動喫煙が原因で死亡する人は、肺がんや脳卒中など国内で年間約1万5000人に達するという報告をまとめている。