歯に衣着せぬ物言いで知られる麻生太郎副総理兼財務・金融相が、「証券会社勤めはヤバイやつ」などと発言したことが、物議を呼んでいる。
麻生財務相は首相時代の2009年3月にも、「『株屋』っていうのは信用されないんだよ」「預金と違って株をやってるというと田舎では怪しい」などと発言。証券業界に波紋が広がったことがある。
日本証券業協会「お話しのしようがありません」
共同通信や時事通信は2016年8月31日付で、麻生財務相が30日に開かれた東京都内での会合で、「『なんとなく債券、株に投資するのは危ないという思い込みが(国民に)ある。あれは正しい。われわれの同期生で証券会社に勤めているのは、よほどヤバイやつだった』と述べた」と報じた。
さらには、「証券会社でほぼ詐欺かその一歩手前のようなことをやり、『あんなやくざなものは辞めろ』と親に勘当されたやつがいるぐらいだ」と指摘。「怪しげな商売といえば、不動産と証券だった」といい、「昭和30年代、40年代に学生だった人は誰でも知っている」とも語ったという。これらは、証券会社に勤める社員を罵るような発言だ。
これまでも数々の放言で波風を立ててきた麻生財務相だが、今度ばかりは証券業界を監督する立場にあり、しかも2度目ともなれば、物議を醸しそう。そうしたなか、インターネットでは、
「株は危ないというのは正しい。麻生さんは正論だ!」
「なにが問題なん? 太郎ちゃんが正直者だったってことでしょ」
「これは事実なんだからしょうがない」
「投資信託なんか、手数料高くて損ばっか。誰が買うかってーの」
「株がヤバいというより、証券会社勤めの人間がヤバい言うところが的を得ている」
「アベノミクス最強だなwww 財務大臣が株式投資の危険性を啓蒙している」
などと、麻生財務相を擁護する声は少なくない。
もちろん、
「政治屋が言うな!」
「財務大臣がこれを言っちゃダメでしょ。調子に乗るんじゃねぇよ」
「大臣や財務省が悪いから、怪しいんじゃねえの...」
「軽口をたたくのは、実体経済を軽視している証拠だ」
といった「言いすぎ」を指摘する声もある。
「株屋」には証券会社やその社員を見下す意味合いがある。首相時代の「株屋」発言のときには麻生氏への批判が渦巻いた証券業界だが、日本証券業協会は「メディアの報道以上のことがまだ確認できていませんので、お話しのしようがありません」とし、今のところ談話を発表する予定はないという。
株式や投資信託などへの苦情、2016年6月末までの累計で316件
とはいえ、証券業界では、麻生財務相の発言が「行き過ぎ」といえないようなことが起きているようだ。ここ数年、国をあげて取り組んでいる「貯蓄から投資へ」の流れの中で、株式や投資信託などに関する苦情や相談が多く寄せられるようになった。
国民生活センターによると、投資信託の勧誘方法に問題があったり、リスクの説明が不十分であったりする相談件数は2016年6月末までに195件で、前年同期と比べて58件増えた。2015年度は1064件だった。ただ、年度ごとでみると減少傾向にある。 一般に、投資信託は株式と比べてリスクが低いため、「株式投資の入門編」「初心者向け」などといわれ、証券会社などは勧誘しやすいことがある。
寄せられた相談には、たとえば、
「高齢で認知症の母に証券会社がハイリスクな投資信託を売り、損害を出していたことがわかった。電話と書類送付だけで契約させるなど、明らかに説明不足だ」
「高齢で寝たきりの父がハイリスクの海外投資信託に数千万円を投資し、多額の損失が出ていることがわかった。契約当時はすでに判断能力が不十分だったので、騙されたのではないか」
「高齢で一人暮らしの姉から、付き合いのある証券会社が何度断っても執拗に投資信託を勧誘し、困っていると相談された。勧誘を止めさせたいが、どうしたらよいか」
といった事例があるという。
一方、株式や投資信託、債券などの取引による苦情や相談を受け付けている、証券・金融商品あっせん相談センターによると、2016年1~6月末までに寄せられた苦情は累計で316件にのぼっている。
なかでも、株式投資の勧誘に関する苦情が15件、株式の売買取引への苦情が66件、投資信託の勧誘に関する苦情が42件、投資信託の売買取引への苦情が24件と多かった。高齢者からの申し立てが多く、苦情の約4割(15年度)が75歳以上からのものだった。 証券会社が、知識や経験が不足する高齢者に、老後のための貯金を株式や投資信託などに無理やり投資させているということらしい。