治療費180万円が3分の1程度に
実際のTMS治療は、歯医者のような診察台に横たわり、頭に磁気刺激を送る専用機器をつけて治療する。脳の背外側前頭前野(DLPFC)と呼ばれる、感情をコントロールする場所に磁気で刺激を与えてDLPFC機能を改善させ、深部にある感情をつかさどる扁桃体のコントロールができるようになり、症状が改善されると考えられている。脳の表面近くに刺激を与えるだけなので、脳へのダメージはない。
薬を使わないため、子どもへの薬による副作用を心配する家族にとっては安心できる。
さらに、そんなTMS治療が、最近はかなり身近になってきた。「高い」と思われていた治療費が値下がりして、「受診しやすくなった」というのだ。
国内最大級のTMS機器をそろえる「新宿ストレスクリニック」によると、これまでは自由診療ということもあり、1回30~40分の治療を1セット(30回)でおよそ180万円かかった。しかし、それが1回1万9800円、1セット59万4000円と、当初の約3分の1にまで安くなった。
安くできる背景には、TMSに使う医療機器の種類が増えて、価格が下がってきたことがある。それに伴い、治療費も値下がりしている。
クリニックでは、これまでの「ニューロスター」(米国製)に加えて、英国製の「マグスティムラピッドスクエア」と韓国製の「タマス」をそろえた。「最新機器は治療時間も短縮され、約15分で済みます。それにより、患者の治療にかかる負担が軽減されるほか、患者の希望どおりに治療スケジュールが組めるので、通院しやすくなりました」と説明。クリニックにとっても稼働率が上がり、治療できる患者数が増えるので、治療費も抑えられるようになるというわけだ。