子会社の三菱航空機が開発する国産初の小型ジェット旅客機「MRJ(三菱リージョナルジェット)」と「飛鳥Ⅱ」などの豪華客船という、三菱重工業の「2枚看板」に「異変」が起きている。
2015年秋に初飛行の成功に沸いたMRJへの信頼性が揺らぐ一方で、日本で唯一、豪華客船をつくれる技術力をもちながら、約10年ぶりに建造した超豪華客船で大赤字を出して苦しんでいる。
MRJが2日連続で試験飛行中止
三菱重工業は、日本の重厚長大産業の代表格で、2017年には三菱合資から独立して100年を迎える。そんな同社が国産ジェット旅客機「MRJ」の事業化を発表し、子会社の三菱航空機を設立したのは2008年。当初は11年の初飛行を見込んでいたが、延期すること5回。念願の初飛行が15年11月だった。
MRJは70~90人乗りの中距離機。すでに初飛行をする前には、400台以上の受注を得ており、2020年には月産10機の生産を目指す計画。中距離機の需要は急速に拡大するとみられ、早期の収益への寄与も期待されている。
ところが、初飛行からわずか1か月の2015年12月、三菱航空機は2017年4~6月としていた全日本空輸への初納入の予定を1年程度延ばして2018年半ばとする、4度目の納期の延期を発表。三菱重工との連名で、「開発スケジュールを見直している」とコメントした。
さらに、2016年8月28日午後には米国に向けた試験飛行のため、愛知県営名古屋空港を離陸したMRJが、北海道函館市の上空でUターンを余儀なくされた。機内の温度や気圧を一定の状態に保つ「空調システム」の不具合が原因だった。前日にも同じシステムの稼働状況を把握する監視機能が異常を示したため、離陸から約1時間後に引き返しており、2日連続のトラブル。
三菱航空機は「飛行の再開は、点検結果を見て判断します」とコメントしているが、不具合の原因究明が長引けば、開発スケジュールの見直しを余儀なくされたり、再び納入の遅れが表面化したり、さらにはMRJの信頼性そのものを揺るがしかねない。
豪華客船の特別損失、累計2300億円超
一方、豪華客船の建造事業も苦しい。豪華客船でのクルーズは最近の新しい旅行スタイルとして人気で、世界には380隻もの外国客船がある。現在、日本にある大型客船3隻のうち、2隻(「飛鳥Ⅱ」と「にっぽん丸」)が三菱重工の建造だ。
だが、2016年8月27日付の朝日新聞は、「客船造り130年、岐路に ネット対応遅れ大赤字、撤退も浮上」の見出しで、三菱重工の客船建造が、「事業をやめるかどうかの瀬戸際に追い込まれている」と報じた。客船内でインターネット回線が利用できるようにするための設備投資に金がかかってしまい、赤字になるというのだ。
三菱重工は2011年に受注した米カーニバル傘下の「アイーダ・クルーズ」向け豪華客船2隻(いずれも約12万5000総トン、3250人乗り)の建造で、2015年3月に納入予定だった1番船が、設計や資材の変更などで納入時期を2度延期し、越年。16年3月に引き渡したものの、4月25日に、建造の遅れを理由に、「2016年3月期に508億円の特別損失を新たに計上する」と発表していた。
1番船ではエンジンの不具合や、顧客の要望に応じた騒音対策や内装の仕様変更などで納入が送れたほか、1月に発生した火災の影響もあって費用がかさんだ。豪華客船の特別損失はこれが初めてではなく、2016年3月期までに累計で2300億円超を計上。2番船は1番船での作業が反映されるとはいえ、16年内の引き渡しは難しく、損失がさらに膨らむ可能性もないとはいえない。
インターネットには、三菱自動車の燃費不正も含めて、三菱グループ全体の問題としてとらえる向きもあり、ツイッターには、
「ネット回線引けないといまや完全消滅の時代か。自動車の燃費問題もあるし、2016年は三菱にとって最悪の年になったな」
「最近の客船の客室数考えると、街一個分のネット回線をつくるようなものだし、そりゃノウハウないと死ぬわwww」
「三菱グループ自体が全体に時代に追いついていないということはないんだろうか...」
といった声も寄せられている。