iPhone販売に力入れるほどNOTTV普及の足を引っ張る
NOTTVは「スマートフォンやタブレット端末向け放送」をうたっていたが、受信のためには端末に独自のチューナーを搭載する必要がある。そのため対応端末が増えず、契約が伸び悩む一因になった。放送スタート時に対応していたのはわずか2機種で、12年夏向けに発表された19機種も、NOTTVに対応していたのは5機種だった。
NOTTVやワンセグには対応していないiPhone(アイフォーン)が日本でシェアを拡大した影響も大きかったとみられる。iPhoneから NOTTVを見るためには外付けのチューナーを購入する必要があったが、現実的にそこまでしてiPhoneでNOTTVを見たいと思う人は少なかったようだ。ドコモがiPhoneの取り扱いを始めたのは、NOTTV開局から1年半近く経った13年9月。ドコモがiPhoneの販売に力を入れるほど、結果としてNOTTV普及の足を引っ張っていた可能性もある。
放送終了の発表後、識者からは冷ややかな声が相次いだ。東洋大の山田肇教授は15年11月のハフィントンポストへの寄稿で
「やっぱりNOTTVは失敗だった」
「ビジネスモデルは古臭く、スマートフォン全盛の今には合わなかったのだ」
と指摘。また、NOTTVが開発された当時、ドコモの執行役員を務めていた夏野剛・慶應義塾大学特別招聘教授は、
「こんなものどう考えたって上手くいくわけないでしょう、と主張したが、聞きいられなかった。会議は多数決でもなく社長裁定だったから。まさに暖簾に腕押し。無力さ感じたなあ」
と振り返った。
NOTTVを運営していたmmbiの16年3月期の決算(単独)では、83億7800万円の売上高に対して、70億8800万円の営業赤字、78億9400万円の経常損失、169億8500万円の純損失を計上。放送終了翌日の7月1日付でドコモに吸収合併された。