年配の女性の多くが悩む更年期症状だが、孫をかわいがると症状が軽くなることが最近の研究でわかってきた。小さな子どもの面倒をみると分泌される「愛情ホルモン」が、更年期になると減少する女性ホルモンの代役を務めてくれるからのようだ。
孫の世話は大変だが、自然が与えてくれた症状を和らげてくれる摂理と思うと、可愛さがいっそう増すかもしれない。
代表的症状「ほてり・のぼせ」が軽減
この研究をまとめたのは、米インディアナ大学のチームだ。更年期医学専門誌「Menopause」の2014年10月号に発表した。
研究チームは、家族構成が更年期症状の改善に与える影響を調べるため、遺伝性の卵巣がんの予防のために両方の卵巣を摘出した117人の女性を対象に調査を行なった。卵巣を摘出すると排卵が行なわれなくなり、閉経と同じ状態になるため、更年期症状が早く表れる女性が多い。その中でも、代表的な症状のホットフラッシュ(ほてり・のぼせ)について、手術の2週間前、手術後2か月、6か月、12か月の計4回、聞き取り調査を行なった。
また、同時に同居している家族についても聞き取り調査を行ない、特に同居の子ども(孫を含む)に関して、(1)13歳未満(2)13歳以上~17歳未満(3)18歳以上、の3つに分類した。
聞き取り調査の結果、卵巣摘出によって更年期症状が始まった女性では、13歳未満の子と暮らしている人は、そうでない人と比べ、ホットフラッシュが軽いことがわかった。また、卵巣摘出の時点ですでに更年期だった女性も、13歳未満の子と同居している場合は、手術後の方がホットフラッシュは軽くなったと報告した。こうした改善効果は13歳以上の子と同居している女性にはみられなかった。
ペットを可愛がったり、好きな音楽を聞いたりもいい
なぜ、小さな子どもと同居すると、更年期症状が軽くなるのだろうか。研究チームでは「はっきりしたことはまだ分からないが、愛情ホルモンであるオキシトシンが分泌されるからではないか」と推測している。
オキシトシンは「幸せホルモン」とか「抱擁ホルモン」とも呼ばれる。特に母親が赤ちゃんに授乳している時に多く分泌され、「赤ちゃんを守りたい!」と思う母性の源といわれる。ペットをなでたり、異性と触れ合ったり、他人と会話を交わしたり、好きな音楽を聞いたりする時にも分泌される。
最近の研究では、オキシトシンが増えると気持ちが安らぎ、ストレスや不安が消え、血圧が低下し心拍数が落ち着き、自律神経が安定する効果があることがわかっている。また、閉経後に減少して更年期症状の原因となる女性ホルモンのエストロゲンと似た働きをすることも明らかになっている。
小さな子どもの面倒をみることで、子育てに関与するオキシトシンの分泌が促進されるようだ。初孫ができる頃と更年期が始まる頃が重なる女性は少なくない。思いっきり「おばあちゃんになる」ことで更年期を乗り切ろう。