俳優・高畑裕太容疑者(22)の逮捕を受けて、母親で女優の高畑淳子さん(61)が2016年8月26日、謝罪会見を開いた。
今回の事件では「高畑容疑者は甘やかされて育った」と報じるメディアも出ている。「仲の良すぎる母子」の関係に、問題があったのだろうか。
あけすけ発言や先輩への非礼を叱ったか
テレビでしばしば紹介されてきた、高畑容疑者のインスタグラムの動画では、母子で笑いながら乾杯する様子が映っている。バラエティー番組で2人はたびたび共演し、淳子さんが仕事場に同伴して高畑容疑者を売り込むこともあったと伝えられた。
だが、子育ては順調ではなかった。2016年8月26日放送の「とくダネ!」(フジテレビ系)では、高畑容疑者が中学時代に生活が荒れ、部屋からは母と子の怒鳴り合いが聞こえた過去や、全寮制の高校に進学したことに関して、淳子さんが「邪魔だったから出したみたいな感じがちょっとあって、すごく罪悪感みたいなのがあった」と振り返っていた。
高畑容疑者が俳優を志し、テレビに出るようになると、淳子さんから頻繁に「ダメ出し」が浴びせられるようになったという。厳しく仕込もうという親心が垣間見られる。その一方で、番組で性に関するあけすけな発言をしたり、芸能界の大先輩にも「タメ口」で会話したりと、成人男性としては少々常識にかける行動については、注意や助言をしていたのだろうか。こうした先輩芸能人のひとりに、淳子さんは後日息子の非礼をわびに来たそうだが、高畑容疑者本人に対して叱ったかどうかは不明だ。
経済ジャーナリストの木暮太一氏は、先述の「とくダネ!」のなかで、以前高畑容疑者がテレビで「女性をお姫様抱っこしてベッドに投げた」と話した際に、隣にいた淳子さんがその発言を許していた点を指摘し、「仲がいい母子だったとしても『そんなこと言うものではないし、考えるものでもない』と、母親としてその時にきつく指導した方がよかったと思う」と述べた。
淳子さんの高畑容疑者への向き合い方について、8月24日付のスポーツ報知(電子版)は「演劇関係者から『甘やかしすぎ』という声も上がっていた」と報じた。ただ、具体的にどの点が「甘やかしすぎ」なのかは触れていない。
「息子萌えする」「一生独身でいてほしい」
いつまでも母親にベッタリする男性は、よく「マザコン」と言われる。逆に、子離れできない母を指す「ムスコン」なる言葉もあるようだ。
インターネットの質問投稿サイト「発言小町」には、大学生のひとり息子をもつ母親が「笑いのツボや、読書やDVD鑑賞などの趣味が合い、話もつきません」「息子と一緒の時が至福の時」としたうえで、「一生独身でいて欲しいけど、もし結婚したらもちろん同居か近くに住むつもりです」と断言していた。
2013年5月23日付の朝日新聞は、「高校1年生の息子と買い物に行くだけでデート気分になる」という42歳母のエピソードを紹介。2人でボートに乗り、オールで懸命にこぐ姿にたくましさを感じ「息子萌え」した、相談事も深夜に帰宅する夫ではなく「聞き上手で助言もしてくれる」息子にする、と明かしていた。
子離れできない親について、メンタルヘルスの専門家の中嶋泰憲氏は、2012年6月26日付「オールアバウト」の記事で解説している。原因のひとつとして挙げたのが、夫婦仲だ。子どもなしに自分の生活が成り立たなくなったのは、もしかしたら夫の顔を見るのもイヤなほど夫婦関係がおかしくなっているのではないか。また、子離れできないことで子どもの負担が増しているような場合は、母親本人が心を安定させ、子離れするアクションをとってほしいと説く。
高畑母子の場合、こうした関係だったかは分からない。テレビ番組で流れた過去の母子の映像を見ると、淳子さんが子離れできず、息子とベタベタしていたばかりではない印象も受ける。高畑容疑者のテレビでの奔放な発言も、もしかしたら「キャラづくり」だったかもしれない。だが現実には、共演者から快く思われていなかった。こうした点を、母であり役者の大先輩である淳子さんが、「仲良し母子」の殻を破って厳しく叱っていたら事態は変わっていたかもしれない。