米次期政権が再交渉を選択した場合
こうした中でも、日本政府は、できるだけ早期の国内承認を目指している。「米国を含む12か国が早期発効を目指すことで一致している」(菅義偉官房長官)とし、米国のTPP参加が揺らぐことはないという姿勢を表向きは強調する。もちろん、「大統領選前に国会承認を終え、再交渉を迫られる事態を回避したい」との思惑があるが、それ以上に、「日本が率先してTPPを批准し、各国の動きを促すべきだ」(政府関係者)との声が強い。米国内情勢が厳しいだけに、オバマ政権を援護射撃し、米国内でオバマ政権のうちにTPP承認をしようという流れを、少しでも後押ししようということだ。
このため、政府は、秋の臨時国会には何としても承認を実現する構えで臨む。8月の内閣改造でも、安倍晋三首相は石原伸晃・経済再生担当相を留任させたほか、農相については、業界団体から現金を受け取っていた森山裕氏を山本有二氏に交代させ、審議の障害を取り除き、足場を固めた。
ただ、TPP承認はそもそも、6月に閉会した通常国会で目指しながら、野党の反発で審議が紛糾し、継続審議になったという経緯もある。農業団体を中心に日本国内でも反対論は根強く、参院選で与党が北海道や東北地方で苦戦した大きな理由がTPPだったとされる。
仮に米国の次期政権が再交渉を選択した場合、日本が今回、国会で承認しても、再交渉の結果を受けて再度承認が必要になる。野党は、こうした内外の状況を国会審議の中で突いてくるはずで、早期承認で各国をリードするという政府のシナリオが実現するかは見通せない。