日本は米国にハシゴはずされる? TPP先行承認論のワナ

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   日米など12か国が参加する「環太平洋パートナーシップ協定(TPP)」の発効に黄信号がともっている。2016年11月の米大統領選で共和党候補のドナルド・トランプ氏が一貫してTPP反対を訴えているだけでなく、民主党候補のヒラリー・クリントン氏も8月11日、ミシガン州で演説し、「(TPPに)「選挙後も大統領になっても反対する」と明言し、激戦の大統領選を通じて反TPPムードが一段と強まっているためだ。日本政府は秋の臨時国会で承認し、米国の承認を促す考えだが、先行き不透明感が増している。

   TPPは2015年10月に12か国が大筋合意し、2016年2月には署名まで漕ぎ着けた。各国それぞれの国内の承認手続きを経て、発効を待つまでになっている。しかし、米大統領選が水をさす状況だ。トランプ氏は白人労働者層の支持を基盤としており、「自由貿易の拡大によって国内の製造業が弱体化し、国内の雇用を減らしている」などと主張、TPP反対を強く訴えてきた。

  • TPPはどうなるのか(写真はワシントンのホワイトハウス)
    TPPはどうなるのか(写真はワシントンのホワイトハウス)
  • TPPはどうなるのか(写真はワシントンのホワイトハウス)

米大統領選、両候補とも「反対」

   対するクリントン氏はオバマ政権の国務長官も務め、TPP推進の立場だった。ところが、左派の立場から労働組合などの意向を背に「TPP阻止」を訴えた民主党のバーニー・サンダース氏との民主党大統領候補者争いがもつれた影響もあって、サンダース支持層を取り込むため、TPPを支持するわけにはいかなくなり、民主党指名争い中も、現状の内容には反対するとして、慎重姿勢をにじませていた。それでも、「クリントン氏は大統領選に勝利すれば、容認に転じるだろう」(日本政府関係者)と見方が強かっただけに、8月11日の演説は、関係者にとって大きなショック。

   トランプ氏が大統領になればもちろん、クリントン氏が当選した場合でさえ、承認の行方は見通せなくなったと言える。

   オバマ大統領は「選挙が終われば本来の(TPPの)意義に注目が集まるはずだ」とし、大統領選後の自身の任期中(2017年1月まで)に議会承認を目指す考えを繰り返している。しかし、特に議会で多数を握る共和党の中では、「大統領が『レームダック』期間中に重要な貿易協定を承認すべきでない」との指摘が強く、カギを握ると見られるライアン下院議長は8月4日のラジオ局のインタビューの中で、「議会でTPPに対する十分な支持がない限り、否決されるために採決を行う意味はない」と語り、承認の見通しは全く立たない状況に陥っている。

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