伊豆諸島や静岡県の伊豆半島、関東南部の一部を暴風域に巻き込みながら北上した強い台風9号。猛烈な雨風で、土砂災害や川の氾濫、高波などに厳重な警戒が必要ななか、気象庁はいつものように「不要不急の外出は控える」よう呼びかけた。テレビでも繰り返し流れるこのフレーズに、電車が動いている限り出社するビジネスパーソンたちが敏感に反応している。
2016年8月22日昼までの12時間に降った雨の量はいずれも多いところで、静岡県で300ミリを超えているところがあるほか、伊豆諸島や神奈川県で150ミリ前後に達する大雨になっている。風も強まり、伊豆諸島の三宅島で10時40分には42.1メートルの最大瞬間風速を観測。もちろん、海は大しけだ。
内閣府や自治体も「外出を控えて」
強い勢力の台風9号は、22日正午すぎ、千葉県館山市付近に上陸したとみられる。関東に直接上陸したのは、2005年の台風11号以来11年ぶりという。
気象庁は、これまでの雨で東京と伊豆諸島、静岡県、神奈川県、千葉県、埼玉県、山梨県では土砂災害の危険性が非常に高まり、地域によって「土砂災害警戒情報」や「氾濫危険水位情報」を出した。東京や神奈川県、埼玉県などに活発な雨雲がかかっていた正午ごろには、「記録的短時間大雨情報」を発表。埼玉県入間市付近と東京都青梅市新町で、約100ミリメートルの猛烈な雨が襲った。
この日、気象庁は朝から土砂災害や川の氾濫、暴風、うねりを伴う高波への警戒と、落雷や竜巻などの突風や高潮に十分注意するよう呼びかけるとともに、「不要不急の外出」を控えるよう促していた。
気象庁だけでない。ツイッターでは内閣府や、東京都中央区や葛飾区、板橋区なども「台風情報」を配信。土砂災害や河川のはん濫などへの警戒と、「不要不急の外出を控える。少しでも危険を感じたら積極的に避難するよう心がけてください」などと呼びかけた。
ところが、そんな台風接近のさなかでも、22日の東京都心のオフィス街はいつもと変わらず、多くのビジネスパーソンが会社へと急いでいた。ツイッターなどには、
「『不要不急の外出は控えてください』って、再三テレビで言ってるのに、どうして電車はいつもと同じように混んでるんだろう・・・」
「会社に着いたら、みんな席にいたwww」
「なんだか、悲しい性を感じるな...」
などといった声が多く上がり、22日のヤフーニュースの「話題」のワードランキングでも「不要不急」が上位を占めた。
おそらく、会社に着いてしまえば、どうにか仕事ができるということなのだろう。なかには早めに家を出て、会社に向かった人も少なくなかった。
気象庁「明確な基準があるわけではありません」
そもそも、「不要不急」とは「重要でなく、急ぎでもないこと」をいう。つまり、「不要不急の外出を控える」とは、重要でなく、急ぎでもないのであれば、外出しないように、ということだ。
逆に、「必要があり、かつ急ぎの用事」のときであれば、外出してもかまわない。また、「必要ないけど、急ぎの用事」のときや「急がないけど、必要な用事」であれば、外出できるとも受け取れる。
インターネットでは、そんな「不要不急」の言葉に、
「『不要不急の外出は避けましょう』って言われてるのに、電車が動く限り出勤しなくてはいけないんだな、これがwww」
「弟、部活休み。わたし会社に・・・」
「台風リポーターさん、『不要不急の外出は避けて下さい』とおっしゃるが、そのレポートが不要だぞ!」
「せっかくのお休み。映画観に行きたいけど... これは不要不急の外出なんだよな。きっと...」
「不要不急の外出は控えるように。ただし社畜は除く、かwww」
「気象庁『不要不急の外出は控えてください』 会社『電車動いてるから来れるよね』」
「台風の日とかもうすべてお休みでいいよ。『不要不急の外出は控える』って言うなら、そういう社会にしてほしい」
などの声が寄せられている。
「微妙」な判断のしどころだが、少なくともビジネスパーソンの多くは、遅刻してでも会社に向かったようだ。
気象庁が「不要不急の外出を控える」よう呼びかけるケースは、台風のほか、これまでも局地的な激しい雷雨や突風、猛吹雪のときなどがあった。
とはいえ、気象庁の「不要不急」のコメントには、たとえば大雨や洪水、暴風、大雪などによる災害の恐れを警告・注意する気象警報・注意報や、台風の強さや位置、速度などによって呼びかけるといった「明確な基準があるわけではありません」という。
ただ、「主に強い風によって、モノが飛んで来たり、吹雪のときに視界が利かなくなったりすることが考えられるときに、会見などで使っています」と話す。
さらに、台風などのときに「不要不急の外出を控える」のは、土砂災害や河川の氾濫などに巻き込まれることを避ける、2次的な被害を起こさないということもあるようだ。