「人は足から老いる」というが、足腰の衰えは思いのほか早く、50代から始まっていることが、米デューク大学の研究でわかった。この衰えを防ぐには40代以前から体を動かす習慣をつけなくてはいけないという。
米の加齢医学専門誌「Journals of Gerontology Medical Sciences」(電子版)の2016年6月29日号に発表された。
持久力より先に足腰の筋力が落ちる
研究チームは、30歳から100歳以上の健康な男女775人の協力を得て、簡単な基礎体力と持久力のテストを行なった。ウォーキングと片足立ち、そして椅子からの立ち上がりの反復運動に挑戦してもらい、身体機能を調べた。
その結果、最初に衰え始めるのは、片足立ちか椅子からの立ちあがりの能力で、50代から始まる人が多かった。意外にも、ウォーキングの持久力や速度に衰えが目立ち始めるのは遅く、60~70代からが多かった。持久力より先に足腰の筋力が落ちるのだ。
同大のキャサリン・ホール助教授は「今回の結果は重要です。『加齢』は『高齢』になるまで生じないと思うのは間違いで、50代から衰えるのです。身体機能の検査は通常70代以上で行なわれますが、その時までに問題を改善するチャンスが40年近く失われていることがわかりました。40代以前から運動を始めなくてはいけないということです」と語っている。
片足立ちができない人ほど脳梗塞で死ぬリスクが高い
ところで、片足立ちといえば、京都大学の田原康玄准教授が「片足立ちができない人ほど脳梗塞で死ぬリスクが高い」という研究を2014年に発表した。一見、健康そうな人でも自覚症状がない「脳小血管疾患」になっている人は非常に多い。これは、脳内の微細な血管が詰まったり(ラクナ脳梗塞)、破れて微量の出血をしたり(脳微小出血)することをいう。いわば、ミニ脳梗塞・脳出血だ。
本格的な脳梗塞や脳出血の前触れで、すぐに命の危険はないが、こういう人は両目を開けて「片足立ち」を何秒間できるか試すとすぐわかる。田原准教授は、片足立ちテストを行なった後に被験者たちの脳をMRI(脳磁気共鳴画像)で検査した結果、20秒未満しかできなかった人は、20秒以上の人に比べ、かなり高い割合で、ミニ脳梗塞・脳出血があることを発見した。脳に異常があるから体のバランスがとれないのだ。
逆に片足立ちをしっかり練習すると、血流がよくなって脳の活性化にもよい。最近、問題になっている「ロコモティブシンドローム」(運動器症候群・略称『ロコモ』)対策としても推奨されている。「ロコモ」とは老化により筋肉や関節が衰えて、立ったり歩いたりできなくなり、要介護状態の一歩手前になることだ。自宅で片足立ちの練習を繰り返すと、左右1分行うだけでも約50分のウォーキングに相当する下半身の筋トレになる。
厚生労働省のデータ(2006年)によると、75歳以上で片足立ちが20秒以上できる人は男性で39%、女性で21%だった。アナタは20秒以上できるだろうか。若い世代でも、片足立ちは通勤途中や仕事の合間の格好の運動になり、メタボ対策としてもオススメだ。ぜひ、ためしてはいかが。