中小型液晶パネル大手のジャパンディスプレイ(JDI)の資金繰りが悪化している。主力のスマートフォン向け液晶パネルの需要が急減した上、新設した工場の設備費支払いなどが重なったからだ。
「全面的に支援していくとのコメントを得ている。どうか資金繰りについては安心してほしい」。JDIの本間充会長は2016年8月9日に開いた4~6月期決算会見で、そう強調した。資金繰りに窮したJDIは8月初旬に筆頭株主の政府系ファンド、産業革新機構に数百億円規模の金融支援を要請。決算会見で全面的な支援の確約を得たことを明らかにし、市場を安心させようとした。
スマホ依存の事業構造の弱さが浮き彫り
JDIは、日立製作所と東芝、ソニーの中小型液晶パネル事業を統合して2012年4月、発足した。統合を主導したのが革新機構で、この分野での世界トップ企業。米アップルが主要顧客であり、「iPhone(アイフォーン)」人気を背景に受注を拡大させてきた。今では売上高のほぼ半分をアップルが占めている。
しかし、韓国、中国勢の台頭で液晶パネルの販売価格は低下しており、JDIは「2016年1~3月期に始まったスマホ市場の需要急減に加え、在庫の増加、設備の支払いが重なって一時的に資金繰りが逼迫した」(本間会長)という。銀行から短期の借り入れを繰り返すなどして乗り切ったが、スマホに依存する事業構造の弱さが浮き彫りとなった。
こうした事業環境の変化からJDIの業績も悪化。2016年4~6月期は売上高が前年同期比29.2%減の1743億円、本業のもうけを示す営業損益は前年同期の22億円の黒字から34億円の赤字に転落し、純損益も117億円の赤字だった。
革新機構へ支援要請
スマホ依存からの脱却が急務だが、そう簡単ではない。特に主要顧客のアップルは2017年以降に発売するiPhoneの新モデルに次世代の有機ELパネルを採用する方針で、JDIも有機ELの量産化に向けた開発を迫られることになった。
開発には数千億円規模の巨額資金が必要となるが、金融機関は短期融資には応じるものの、長期の新規融資には慎重な立場。それが革新機構への支援要請につながったわけだが、JDIは支援を元手に財務の健全性を高めた上で有機ELの開発を加速させる考えだ。
しかし、思惑通りに事態が進むか不透明だ。革新機構は支援する方針とはいえ、具体的な支援内容が固まっているわけではなく、本間会長が言うほど楽観的な状況とは言えない。
また、有機ELでは韓国勢が大型投資を重ねて先行。サムスン電子は既に有機ELの量産に成功し、アップルへの納入に備えている。LGグループも巨額投資を実施することを公表している。有機EL開発では「後発」で、しかも開発資金に窮するJDIが、厳しい開発競争の中で生き残れるかは見通せない状況となっている。