自民党の石破茂前地方創生担当相は2016年8月19日、現在上映中の人気映画「シン・ゴジラ」のシナリオについて、ブログで「注文」をつけた。
石破氏は、ゴジラの襲来にあたって、劇中の日本政府が自衛隊に防衛出動を下すシーンを疑問視。ゴジラを「天変地異的な現象」と見なし、あくまで「災害派遣」で対処するのが妥当だと指摘した。石破氏は第1次小泉第1次改造内閣~第2次小泉内閣(02年9月~04年9月)で防衛庁長官、福田内閣(07年9月~08年8月)で防衛相を務めている。
「武力の行使」が認められるのは「防衛出動」のみ
石破氏は「お勧め下さる方があって、『シン・ゴジラ』も映画館で観る機会があった」と報告。そのうえで、「何故ゴジラの襲来に対して自衛隊に防衛出動が下令されるのか、どうにも理解が出来ませんでした」と指摘した。
「シン・ゴジラ」の大筋のシナリオはこうだ。ある日、東京湾アクアトンネルの崩落事故が発生する。事故をうけて設けられた首相官邸の緊急会議で、俳優・長谷川博己さん演じる内閣官房副長官・矢口蘭堂は海中にいる謎の生物が事故を起こした可能性を指摘する。その後、矢口の指摘通り、海中から出現したゴジラが関東地方に上陸し、破壊の限りを尽くす。ゴジラを迎え撃つべく、政府の緊急対策本部は自衛隊に防衛出動命令を下した。
現行の自衛隊法によると、防衛出動にあたっては武力攻撃事態法9条に基づき国会の承認を得なければならない。国会承認を経て、内閣総理大臣に命令された場合、自衛隊は「わが国を防衛するため、必要な武力」を行使できる。自衛隊法の中で自衛隊に「武力の行使」が認められるパターンは、この防衛出動に限られる。
防衛出動は、日本に対する外部からの武力攻撃があったり、武力攻撃が発生する明白な危険があることが前提だ。そういったこともあって、石破氏は
「いくらゴジラが圧倒的な破壊力を有していても、あくまで天変地異的な現象なのであって、『国または国に準ずる組織による我が国に対する急迫不正の武力攻撃』ではないのですから、害獣駆除として災害派遣で対処するのが法的には妥当」
などと防衛出動の判断に疑問符をつけた。
ただ、ブログの中では「災害派遣では武器の使用も武力の行使も出来ない」という反論があることも指摘。「(ゴジラ襲来への対応は)『警察力をもってしては対応困難な場合』に適用される『治安出動』ではどうなのか」と別の可能性も示している。