「流し」需要が多い東京都心だからこそ
タクシーの初乗り運賃の引き下げが実現すると、2キロ未満の「ちょい乗り」であれば、現行運賃よりも安くなる。しかし、初乗り410円の後は237メートルごとに80円の加算(現行は280メートルで90円)となるため、2キロで現行と同じ730円になる。ただし、2キロを超える利用では現行運賃よりも割高となるケースもあるので注意が必要だ。
国交省によると、東京都心のタクシー利用は平均4キロとされる。タクシー業界は「初乗り運賃の引き下げで、お年寄りや訪日外国人観光客らの『ちょい乗り』需要を取り込みたい」と意気込むが、実際は「初乗り運転の引き下げで、利用者のタクシー離れを少しでも食い止めたい」というのが本音のようだ。全国のタクシー・ハイヤーは都市部を中心に供給過剰で過当競争が続き、過去20年間で台数は約1割、輸送実績は約4割減少するなど長期低迷が続いているからだ。
しかし、初乗り運賃の引き下げができるのは、「全国でも『流し』のタクシー需要が多い東京都心だから」との見方で関係者はほぼ一致している。全国の主要都市の初乗り運賃は名古屋市を除けば600円台が大半を占めており、東京都心の410円に追随できる地域は今のところ見当たらないのが現実だ。