渡り鳥は数千キロから数万キロ、地球半周分くらいの長距離を何日間も飛び続けることができる。その間、睡眠はどうしているのだろうかと心配になる。
実は、しっかり熟睡しながら飛んでいることがドイツのマックス・プラント研究所の研究で明らかになった。英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」(電子版)の2016年8月3日号に発表された。
脳の半分ずつ交互に眠る「半球睡眠」と思われていたが...
これまでの研究では、渡り鳥は脳の半分を休ませ、残り半分を活動させることができるので、半分ずつ交互に眠っているのだろうと推測されていた。これを「半球睡眠」と呼ぶ。イルカやクジラも、水面に顔を出し呼吸する必要があるため、睡眠中も片目を開け、脳の半分を活動させている。その間、片方の目を閉じ、脳の半分を休ませる。海の中では天敵がいつ襲ってくるかわからないため、脳全体が眠ることはしない。
今回の研究では、鳥の頭部につけて脳波を測定できる小さな機器を使い、ガラパゴス諸島に生息するグンカンドリを調べた。飛行中の鳥の脳波を調べたのは世界初である。グンカンドリは3000キロもの距離を休むことなく飛び続けた。飛行中に無線で送られてくる脳波を調べると、日中は覚せいした状態で飛んでいた。ところが日が沈むと、脳波に変化がみられ、ときどき「徐波睡眠」に入ることがわかった。「徐波睡眠」は最長で数分間続いた。しかも、「徐波睡眠」は脳の半球ではなく、脳全体にみられた。
飛行機のような「自動飛行モード」
睡眠を大きく分けると、眼球がピクピク動いて眠りが浅い「レム睡眠」と、眠りが深い「ノンレム睡眠」がある。そして、「ノンレム睡眠」は深さによって、ステージ1からステージ4まで4段階ある。そのうち特に熟睡度が高いステージ3~4が、独特の脳波の形をしているため「徐波睡眠」と呼ばれる。
つまり、鳥たちは脳の半球を眠らずに飛んでいるのはなく、短い時間だが、完全に熟睡しながら飛ぶことを繰り返していた。そして、その「熟睡」期間中は、飛行機のように「自動飛行モード」に入っているわけだ。