拳は、何度殴ってもダメージが少ない便利な形
その結果、意外なことに(1)の平手打ちと(2)の緩い拳のパンチ力はほとんど同じだった。ところが(3)の硬い握り拳は、(1)と(2)の約2倍強力だった。しかも、いくらパンチを繰り出しても、筋肉や骨などへのダメージがはるかに少ないことがわかった。親指を人差し指と中指の上に重ねることで、親指と人差し指の骨を通して、突く力が直接相手に伝わる。また、「控え壁」になる親指があることで、指関節の硬さが4倍になり、同時に手の骨や靭帯をケガから守ってくれるという。つまり、相手を何度も殴るのに非常に好都合な形なのだ。
キャリアー教授は「硬く握った拳は、打撃の威力を高め、打撃中の負担も軽くします。私たちの手の進化がただ道具を使うためでなく、他者と闘うためであったことは明らかです。女性をめぐる男同士の争いで有利になるよう、相手を殴るのに適した形に進化したのです。硬い拳の威力はサルより強力です。私たちは反射的に暴力に訴える本能をサルより強く持っているのです」と語っている。
拳が石器、弓矢に変わり、そして銃へ......。人間の暴力と戦争の悲しい歴史は、知性を生んだはずの手のひらから生まれたというのだが。