レスリング女子69キロ級で初出場にして金メダルを獲得した土性沙羅。2016年8月17日深夜(日本時間)に行われた2回戦で、判定をめぐって相手のトルコ代表陣が「チャレンジ」を要求した時に、それは起きた。
大柄で威圧感のある土性選手だが、リング中央に投げ込まれた「ぬいぐるみ」の回りをなぜか、ぐるぐる回り始めたのだ。
「チャレンジ」行使のための立派なルール
リオ五輪のレスリングでは、審判の判定に納得がいかない場合、1試合に1度、ビデオによる再判定を要求できる「チャレンジ」というルールがある。判定が覆らなかった場合は相手に1点が追加される。
12年ロンドン五輪までは柔らかいスポンジをリングに投げ込むことで権利行使できたが、今回のリオ五輪では大会マスコットキャラクター「ヴィニシウス」のぬいぐるみを投げ込むようにと変更された。「ヴィニシウス」はネコとサル、鳥をミックスしたイメージの黄色い動物で、見た目はネコなのだが、サルのような跳躍力をもつという。マスコットは細身に作られ、ブラジルの代表色である黄色のほか、青や緑が加えられていて、なごみ系で人気がある。
これが注目を浴びたのが17日の土性対ブセ・トスンの試合。開始3分10秒過ぎ、タックルで土性に4点が入ったが、トスン側はこれに抗議。リング中央へぬいぐるみがポーンと投げ込まれた。すると再判定を待つ間、土性は腰に手を当てながらリング内を歩きだした。それが丁度ぬいぐるみの周囲を十数秒間ぐるぐると回る形になった。さらに、視界に入っていなかったのか、土性はぬいぐるみを踏んづけてしまい、軽くつまずいた。
緊張感ある一戦の最中、愛嬌あるぬいぐるみをめぐって起きたこの場面は、多くの日本人を和ませたようだ。ツイッター上ではこんな声が続出した。
「投げ入れられるマスコットちゃんのぬいぐるみに草生えるwしかも土性ちゃんに踏まれてるしw」
「土性沙羅選手がそのぬいぐるみの周りをくるくる回ってたのも可愛かった」
「緊迫した試合の中で、土性選手がマスコットのまわりをウロウロしてるの見ると、どうしてもマスコットに目がいって和むな」
「チャレンジするときに投げ込むぬいぐるみが可愛すぎてギャップあかん」
「シュールすぎるだろ(笑)」
「ツボでした。どの競技もそうすれば和むのになー」
なお判定は覆り、タックルの4点が消えて、場外の1点に変更。ただ、その後も土性が攻め続けてポイントを連取。最終的に12-0でテクニカルフォール勝ちとなった。この約8時間後、土性は金メダルを勝ち取ることになる。