「記憶喪失の男性を保護してます」「知ってる人は連絡下さい」――。静岡県沼津市の企業経営者が2016年8月12日、フェイスブック(FB)にこんな投稿を寄せた。警察や市役所の担当者も「有力な手がかりがつかめない」状況の中で、保護した男性の身元情報をネットで募集したのだ。
この投稿はFBだけでなく、ツイッターや2ちゃんねるなどネット上で爆発的に「拡散」。その結果、男性の身元は投稿から「わずか4日」で判明。無事、保護者の元へ引き取られることになった。
「全国的に拡散希望です」
「記憶喪失」だという中年の男性を保護していたのは、沼津市の派遣会社「大心産業」だ。同社はホームレスなど身寄りのない人の支援に力を入れており、今回も市の自立相談支援センターを通じて男性を受け入れることになった。
男性は市内の砂浜で倒れていたところを8月10日に発見された。同社の渡邊大輔会長は8月17日のJ-CASTニュースの取材に対し、
「(男性は)自分の名前や経歴すら分からない状態で、身分を証明できるものは持っていなかったようです」
と話す。会社の寮の1室を男性の仮住まいとして提供していたほか、渡邊さん自身も1日1回は必ず男性の様子を確認していたという。
警察にはすぐに相談したというが「犯罪ではないので、あまり積極的に協力してくれる様子ではなかった」。市の担当者も、本人の好きなブランドだという「ラルフローレン」の直営店に連れて行くなどして男性の身元確認に努めたが、有力な手がかりは得られないままだった。
こうした状況の中、渡邊さんがとったのは「ネットを使って情報を募集する」という手段だった。個人のフェイスブックに12日、保護男性の全身写真を掲載するとともに、「この方を知ってる人は連絡下さい」「全国的に拡散希望です」などとして情報提供を呼びかけたのだ。