円高、一時1ドル=99円台 日本の輸出は大丈夫か 

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   日本の貿易が「変調」をきたしている。財務省がまとめた2016年上半期(1~6月)の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は2010年下半期以来11期(5年半)ぶりに黒字を記録した一方、輸出額は2半期連続のマイナスになった。原油安輸入額が抑えられて黒字になっているものの、円高の影響もあって輸出の不振が目立った。米国の利上げや大統領選、英国の欧州連合(EU)離脱などの影響で円高基調が続くとの見方が強い。円相場は8月16日に一時、1ドル=99円をつけるなど、輸出環境の一段の悪化も懸念される。

   2016年上半期の輸出額は前年同期比8.7%減の34兆5183億円で、落ち込み幅はリーマン・ショックの影響で23%減だった2009年7~12月期以来の大きさだ。月別で見ても、6月まで9か月連続で減っており、1~6月期の対ドルレートは113.12円と、前年同期と比べ5.7%円高になっている影響が出た。世界経済の減速で海外での投資が控えられたため、部品輸出も低迷した。

  • 11期ぶりに黒字を記録した貿易収支
    11期ぶりに黒字を記録した貿易収支
  • 11期ぶりに黒字を記録した貿易収支

貿易収支は東日本大震災後初の黒字

   地域別の輸出額は、船舶が増えたEU向けが4.0%増と伸びた一方、エンジンなど部品輸出が低調だった米国は6.5%減と9半期ぶりにマイナスに転じた。アジアは11.4%減だった。

   一方の輸入額は、同17.2%減の32兆7041億円と、2010年7~12月期(30兆9931億円)以来の低水準だった。財務省によると、2016年1~6月期の原粗油の単価(通関ベース)は1バレル=36.7ドルと36.5%下落しており、この影響が大きかった。

   輸出は減ったが、それ以上に原油価格の下落で輸入も大きく減った結果、原発停止で火力発電所向けの燃料輸入が増えて赤字続きだった貿易収支は、東日本大震災後初の黒字になった。統計の発表は7月25日。

   日本の景気の先行きをみるうえでも大きな問題は、輸出がどうなっていくかだ。為替変動を除いて輸出の数量取引を示す日銀のデータ(季節調整値)をみると、6月は前月比4.3%上昇しており、財務省も「1~6月は素材市況の悪化やスマートフォン需要一巡などで輸出が低調だったが、足元の数量は回復してきている」と説明している。ただ、「熊本地震での落ち込みからの挽回生産で、4~5月に落ち込んでいた自動車関連の輸出が回復してきた部分があり、輸出が基調的に増えているとは言えない」(エコノミスト)との指摘もある。

米国大統領選の行方、英国のEU離脱問題

   今後の輸出の動向は米国経済の堅調が持続するか、中国の景気刺激策の効果がどの程度あるかなどが大きく左右するが、中でも最大の注目点は為替で、8月16日のロンドン市場では、円が一時、1ドル=100円を突破し、99円台半ばまで円高ドル安が進行した。17日の東京市場では100円台に戻したものの、「米国の利上げ時期や米国大統領選の行方、英国のEU離脱問題の今後の展開によっては、海外経済の悪化や一段の円高が進行し、輸出の下振れ要因となる可能性がある」(三菱総研7月25日付レポート)との見方が根強い。

   中長期的には、英国のEU離脱の影響が輸出の下押し圧力となる可能性がある。英国に拠点を置いている企業は欧州戦略の再考を強いられる可能性がある。こうしたことから、「日英、日欧間の貿易構造に及ぶ影響は小さくない。今後の離脱交渉、通商交渉の展開に注視が必要であろう」(大和総研7月25日付レポート)との指摘が出ている。

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