居酒屋チェーン大手の鳥貴族が、チューハイ用の焼酎と間違って食品添加物アルコール製剤を使用し、計151杯を客に提供していたとして2016年8月15日に謝罪した。
食品添加物アルコール製剤というのは調理器具の洗浄に使ったり、食品に混ぜて消毒や鮮度を保ったりするもので、人体への安全性は高い。ネット上では「消毒液を飲ませた」などといった誤解が生まれ鳥貴族に対する批判が高まる一方で、原材料がサトウキビから精製されたエタノールであり、ラム酒や黒糖焼酎を連想させるため「いつものチューハイより美味かった?」などといった声も出ている。
「消毒液を飲ませた」「工業用アルコールだった」との誤解も
J-CASTニュースが16年8月16日に鳥貴族に取材したところ、焼酎と間違って食品添加物アルコール製剤を使ってチューハイを出してしまったのは直営店の「鳥貴族 南柏店」(千葉県柏市)。焼酎もアルコール製剤も似たような形の20リットルのポリエチレン容器に入っていて、通常ならば外枠の段ボールに間違えないように名前が書かれているのだが、なぜか段ボールが外れていたため、店員が間違ってドリンクサーバーに接続してしまった。提供したのは16年7月19日から23日までの5日間の151杯。いつもより泡立ちが多いと感じたが、サーバーの不調と思ってしまった。客からは数件、
「少し味がおかしいんじゃないか?」
という申し出があったものの、「誤差の範囲」と考えた。サーバーのメンテナンスによって今回の件が発覚したという。同社が使っている食品添加物アルコール製剤はサトウキビから精製されたエタノールを原料としていて、添加しているのも食品添加物のみ。食品に対しても使用可能なため、人体への影響がない事を確認している。同社では手指消毒に使用しているという。同社広報は、
「このような事が起きないよう、周知と管理の徹底、容器を変えるなどを行います。お騒がせして心からお詫び申し上げます」
と謝罪した。
ネット上では初め、「消毒液を飲ませた」「工業用アルコールだった」などといった誤解が広がり鳥貴族に対する批判が噴出した。その一方で、原材料がサトウキビであり、食品にも使われているため騒ぎすぎだという声も大きくなった。また、サトウキビを使ったお酒といえばラム酒や黒糖焼酎を連想させる。客から苦情のようなものは無かったようだから、「実は美味かったのではないか」などといったうがった意見も出てきた。
誤飲を避けるために「まずく作っている」
ネット上には、
「これだけ飲まれて売れたってことはうまいんじゃないのか。焼酎ではなくて新しいジャンルの飲み物を発見できたんじゃないのか」
「意外なおいしさであると話題に」
「値段はエタノールの方が高いからな。客は得したんだよ」
「そんなに美味いなら食材添加物アルコール製剤をメニューに加えればいい」
などといった書き込みが掲示板に出た。
本当に美味いのだろうか。J-CASTニュースが今回の「事件」についてアルコール製剤メーカーに取材したところ、まず、業務用として一般に販売されているのはアルコールが60°から80°のもので、鳥貴族は80°近いものを使用しているそうだ。チューハイ用の焼酎の度数も同じくらいで、これをだいたい10倍くらいに薄めて出しているという。値段は焼酎よりも原材料や添加物などの関係からかなり割高になるという。飲めるのか、については、
「人体に害のない材料で作られていますので、飲んでも問題はありませんが、飲料として提供する事は法律で禁止されています。提供しないことを前提に酒税が低くなっているからです」
と説明した。美味いのか、については、
「実は、誤飲を避けるため各メーカーは苦く味付けしたり、臭いを付けたりなど、人体に影響のない添加物を加えています。まぁ、シロップや果物を使うとそれが薄まる可能性はあります」
ということだった。つまりは、「まずく作っている」という事のようだ。今回の鳥貴族のように間違って使用した例はあるのかを聞いてみたところ、
「普通では考えられません」
ということだった。