「爆買い」バブル崩壊 ラオックス、営業利益9割減

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   日本を訪れる中国人観光客らの「爆買い」需要を取り込むことで売り上げを伸ばしてきた、免税店大手のラオックスが純損益で4億円の赤字に転落した。

   観光庁によると、2016年4~6月期の中国人観光客の旅行消費額は3530億円と、訪日外国人の中で最多。構成比でも37%を占めているものの、「爆買い」とまで言われた需要は、金額的には急激にしぼんできている。ラオックスの赤字転落には、このことが背景にある。

  • 「爆買い」需要がしぼんでいる・・・
    「爆買い」需要がしぼんでいる・・・
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「モノ」から「コト」へ、団体旅行から個人へシフト

   全国で41店舗の免税店を展開する「ラオックス」が2016年8月12日に発表した16年1~6月期中間決算によると、売上高は前年同期と比べて22.4%減の350億円、本業のもうけを示す営業利益は90.9%減の4億円となり、純損益は4億6400万円の赤字(前年同期は46億円の黒字)に転落した。

   訪日中国人をはじめとした来店客の商品ニーズが、これまで売れ行きが好調だった炊飯器や食洗機、ウォシュレットなどの家電製品や、時計やジュエリーなどの値段の高い商品から、化粧品や健康食品、医薬品などの比較的安価な日用品へと移る傾向にある。それに伴い、同社は高額商品から化粧品や日用品などに品揃えをシフトしているものの、購買商品の単価が低い分、売上高が伸び悩んだ。

   平均購買単価は2015年1年間の平均が3万3820円だったが、16年1~3月期には2万7369円、同4~6月には2万2922円にまで落ち込み、今後も下落するとみている。

   こうした顧客の購買動向の変化に加えて、消費の「モノ」から「コト」(観光やイベント)への変化や団体旅行から個人旅行へのシフト、観光客の地方への分散化が売上高に影響したとみている。国内の個人消費の伸び悩みや、円高や新興国経済の景気減速によって、国内外で景気回復のペースが鈍ったこともある。

   訪日観光客の地方への分散化傾向にあわせて、ラオックスは16年に、国際線の利用が伸びている地域に重点的に出店攻勢を仕掛け、北海道(2か店)や九州(3か店)、名古屋・京阪(3か店)、東京(1か店)と9か店を出店。16年6月末時点で、全国41か店とした。こうした出店ラッシュに伴う経費の増加も、重荷になった。

   ラオックスは、2016年通期(1~12月期)の売上高が当初(2月時点)の予想から35%減の650億円、営業利益は82.1%減の12億5000万円にとどまると、業績見通しを大幅に下方修正した。

   15年の「爆買い」が過熱ぎみだったこともあり、その反動は大きいようだ。

株価は2年前に逆戻り

   中国人観光客をはじめとした訪日外国人の「爆買い」に変調の兆しが出ていることは、観光庁の「訪日外国人消費動向調査」(2016年7月20日発表)でも明らかだ。4~6月の1人あたりの消費額は15万9930円で、前年同期から9.9%減った。

   なかでも中国は22万円となり、22.9%もの大幅な減少。円が元に対して前年より15%超も高い水準だったのに加えて、中国政府が4月から、海外で買った商品に課す関税の引き上げで、高級腕時計(30%から60%)や家電製品(20%から30%)などが敬遠されるようになった。前年からの落ちこみは、尖閣諸島問題で日中関係が冷えこんだ2012年10~12月を上回るほどという。

   こうした「爆買い」需要の変化は、ラオックスの株価にも大きく反映されている。ラオックス株は、英国の欧州連合(EU)離脱決定後の2016年6月28日には円高の進展もあって、終値で604円まで急落。その後はじわりと上げてきたものの、8月15日の終値は前日(12日)比22円高の711円で引けた。

   じつはこの株価水準は、2年前(14年8月15日終値690円)とほぼ同じ水準にあたる。株価は「爆買い」を背景に2015年に高騰し、同8月14日にはなんと5290円の、ケタ違いの高値を付けていた。16年1月4日につけた年初来高値でも2400円。現在の株価は、その「爆買い」バブルがすべて消えたというわけだ。

   中国人を含む訪日外国人はなお増加傾向にあるものの、訪日中国人においては日中関係の緊張が再び高まる兆しもあり、「爆買い」どころか、減る可能性がないとはいえない。

   今後のラオックスの黒字化への道のりが注目される。

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