国が「上位株主」の企業続々... 懸念される「負」の側面

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GPIFの保有株、トヨタ最多の1兆5499億円

   「企業経営への弊害」について、前出のニッセイ基礎研究所の井出真吾氏は「日銀が企業の株価を下支えすることによって、株価が経営内容を正しく反映できなくなる恐れがある」とし、たとえば株価が下がらないことで、企業の経営状態に問題が生じても株主が気づかなかったり、逆に経営者が株主の「評価」に気づく機会を逸してしまったりする。井出氏は「ポケモンGO!が大ヒットとなった任天堂は、据え置き型ゲーム機に長くこだわってきたが、株主の強い要請も踏まえてスマートフォン向けゲームに舵を切った」と、任天堂を引き合いに、こうしたことが起こりにくくなると危惧する。

   一方、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は2016年7月29日、保有する株式の銘柄や時価総額を、初めて公表した。

   GPIFは、2013年に国内債券60%、国内株式12%、外国債券11%、外国株式12%、短期資産5%としていた基本ポートフォリオを、14年10月から国内株式25%、海外株式25%、外国債券15%、国内債券35%と、リスク資産の運用比率を高めた。

   それに伴い、15年3月末時点の国内株式の運用は、合計で2037銘柄、時価総額31兆4671億円にのぼった。運用先は東証株価指数(TOPIX)を構成する銘柄が大半を占めていて、最も多く保有していたのはトヨタ自動車で、時価総額ベースで1兆5499億円。三菱UFJフィナンシャル・グループが8229億円、三井住友フィナンシャルグループの5173億円と続いた。ホンダ(5079億円)、ソフトバンクグループ(4805億円)、NTT(4210億円)やKDDI(3911億円)、キヤノン(3431億円)の名も上位にある。

   つまり上場企業の一部では上位株主は、すでに日銀とGPIFの、「国」の投資家に独占されつつあるようなのだ。さらに今後、「国」の株主としての存在感は否応にも増すことになる。

   国債は満期があるので償還されるが、株式は売らなければ、なくならない。多くの株式を保有する株主が売れば、それだけで株価は下落。もしかしたら、売りが売りを呼ぶ事態になるかもしれない。

   井出氏は、「超金融緩和政策の出口では何が起こるのか、心配の種は大きい」と指摘する。

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