「日の丸電池会社」も検討されたが
そこで検討されたのが、ソニーや日産自動車、NECの電池事業を統合する「日の丸電池会社」の設立だ。2013年初めごろから、産業革新機構や各社の実務担当者が集まって協議を続け、2014年4月をめどに新会社を発足させるとのスケジュールで、細部を詰めていく作業が進められた。
しかし、2013年末になってソニーは売却を撤回し、逆にソニーの中核事業に据えると言い出した。急速にスマホやタブレットが普及する中、ソニーの事業としてやっていけると考え方を変えたのだ。日産とNECはもともと提携関係にあり、2社だけなら今のままで良い。そのため「日の丸電池」は頓挫を余儀なくされた。
ところが、その後も採算が改善しないなかでソニーは再度、改めて電池事業売却を決断した、というのが今回の村田製作所への譲渡契約にいたるいきさつだ。経産省内には「国外に出なかっただけ、まだましか」との声も聞かれる。
もっとも、経産省が音頭をとる「日の丸会社」は無責任体質もあってか、ろくなことになっていない。半導体のエルピーダメモリは経営破綻したし、液晶パネルのジャパンディスプレイは今まさに資金繰りに苦しむ有りさまだ。ソニーの電池事業が村田製作所に売却されることは、結果的に関係者がハッピーになれる答えだったのかもしれない。