「読売でさえ」楽観的と断じた 「財政健全化」の甘い試算

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「市場が、こんな楽観的なシナリオはありえないと見ている証拠」

   あまり話題になってはいないが、専門家の一部は長期金利にも注目している。これは内閣府の報告書の文章には詳しく触れられていないが、それぞれのケースの2024年までの「マクロ経済の姿」をまとめた一覧表にある「名目長期金利」の項目だ。景気が良くなって成長率が高くなれば、長期金利が上がっていくのは経済の常識で、経済再生を前提にした長期金利は2016年の0.3%から徐々に上がり、2020年に3.4%、2024年には4.4%に達するとしている(「ベースラインケース」では2020年1.5%、2024年1.9%)。金利が上昇すれば国債価格は下落する。今のところ国債市場では大きな反応が出ていないのは、「市場が、こんな楽観的なシナリオはありえないと見ている証拠」(市場関係者)という皮肉な状況だ。

   政府はこの後、8月3日の閣議で事業規模28.1兆円の新たな経済対策を決定した。2016年度補正予算と2017年度当初予算にまたがる中味だが、国・地方の実質的な財政負担(いわゆる「真水」)は7.5兆円(うち国6.2兆円)に達し、国は4兆円を2016年度補正予算案の一般会計に計上する。この財源のうちの3兆弱円を建設国債発行で賄うとしていて、また赤字が膨らむことになる。

   経済からは、諮問会議民間委員でもある経団連の榊原定征・経団連会長が「(経済対策は)デフレ脱却の正念場。大規模な投入を求めたい」と語るのは当然として、経済同友会の小林喜光代表幹事は諮問会議当日の記者会見で、財政試算の目標に「パン食い競走でも背伸びして口に届くぐらいの目標がいいが、ちょいと高すぎるのでは」と苦言を呈したように、数値に無理を感じる向きが多い。

   報道も、諮問会議翌日の7月27日に各紙が一斉に掲載した記事で、「税制健全化 見えぬ道筋」(「日経」)、「財政健全化 達成見えず」(「朝日」)など似たような見出しが並び、安倍内閣支持の論調が目立つ「読売」でさえ、「歳出抑制 薄い根拠」「成長率予測『楽観的』」と、他紙以上に厳しい解説記事を展開した。

   安倍首相は諮問会議でも2020年度PB黒字目標について「堅持する」と改めて明言した。そのために、達成に向けた工程表の練り直しなど、戦略の立て直しが不可欠だろう。

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