「延期なら大混乱」と懸念も
一方、築地で営業する仲卸業者や周辺の場外市場関係者らの中には、今も移転反対論が根強い。第1の理由は土壌汚染問題だ。移転反対・慎重派には「実際は汚染除去が済んでいない状態では」との疑念がある。
第2に交通の利便性の悪さも指摘される。新交通ゆりかもめしかなく、新橋駅始発は朝の6時で、明け方から活動が始まる市場だけに、働く人、買い出しに来る飲食店関係者らは不便を強いられる可能性がある。
ここにきて床が抜けるという懸念も注目されている。反対派によると、新市場で仲卸業者が入るエリアの床積載荷重の限度は、1平方メートル当たり700キロなのに対し、築地で現在行き交っている荷物運搬用の小型車は積荷を含めると2トンにもなるといい、強度的に耐えられないのではないか、というのだ。
このほか、新市場の集客の上で重要な「千客万来施設」にも暗雲がただよう。運営事業者に予定されていた大和ハウスと「すしざんまい」を展開する喜代村が、2015年に相次いで撤退を決め、再公募で「万葉倶楽部」が事業者に決まったが、開業は2018年以降と大きく遅れる。
こうした問題を抱えるからこそ、都知事選でも争点の一つになり、小池氏もあえて慎重論を唱えたわけで、移転慎重派からは「小池さんなら移転を延期してくれるだろう」との期待も膨らむ。一方、「現実に移転延期でも決めようものなら大混乱に陥る」(都政関係者)とも懸念されており、延期決断のハードルは極めて高い。
選挙戦での自身の発言とどのように折り合いをつけ、どのような方向性を打ち出し、軟着陸させるか。新知事の最初の試金石になる。