「東京都民の台所」である「築地市場」(中央区)が「豊洲市場」(江東区)へ移転する予定の2016年11月7日まで3か月を切りながら、計画通り進むか、はっきりしない事態になっている。先の都知事選で圧勝した小池百合子知事が選挙戦から「一歩立ち止まるべきだ」と繰り返し、移転延期も視野に入れているように見えるからだ。これ以上遅れると、2020年の東京五輪・パラリンピックにも影響が出かねないだけに、関係者はやきもきしている。
「安全性の確認、使い勝手の問題、皆さまの納得をいただくために一歩立ち止まるべきだ。急がば回れでみんなが納得する結論を出したい」。選挙戦最中の7月22日、小池氏が築地市場近くで行った演説でそう訴えた。
移転計画は最終段階
8月2日の就任後も、3日の都の部局からの説明を受けた後に「まだよく理解していかなければならない。そういう意味では、立ち止まって考えなければならない」と繰り返し、さらに5日の就任後初の定例会見でも「11月7日の開場に向け、引っ越しも決まっていると承知している。一方で延期や反対の声がある。市場関係者に話を聞きたい。安全性についても専門家に改めてヒアリングする。都民の納得が得られるものか、スケジュールを見ながら見極める」と、慎重な言い回しに終始した。
豊洲移転問題の経緯は、築地市場が手狭になったことや老朽化したことを受け、2001年に計画決定し、都側と築地市場業界との協議を経て2004年7月に「豊洲新市場基本計画」が策定された。たが、2007年に用地の土壌汚染が発覚して、その処理に時間を費やしたほか、使い勝手の問題なども指摘され、開場予定が何度も延期された。そして土壌汚染対策が完了した後の2014年12月に、2016年11月開場が正式に決まった。
移転計画は最終段階に入っており、多くの業者も11月移転を前提に準備を進めている。例えば築地での冷蔵庫や製氷機のリース契約は10月まで、豊洲で新しく11月からの契約が始まることにしている場合、移転が延期になれば契約を見直す必要が出てくる。引っ越し作業の段取りも組み直しになる。
豊洲移転の遅れは、2020年の東京五輪にも悪影響があるという。選手村が建設される臨海部と都心を結ぶ環状2号道路の一部は築地市場の地下を通ることになっているからだ。工事は築地から市場が出て行って更地になっていることが前提になる。ただでさえ環状2号の開通は五輪開会直前になる見通しで、豊洲移転が遅れると五輪開会に間に合わなくなる恐れが出てくる。