天皇陛下はかつて、韓国との「ゆかり」に言及
ただ、現実には、天皇訪韓には大きなハードルがある。2012年8月に、当時の李明博(イ・ミョンバク)韓国大統領が、教育関連行事のあいさつの中で、
「天皇は韓国を訪問したいのであれば、独立運動で亡くなった人々に心から謝罪すればいいというのが私の願いだ」
と述べたことだ。1990年に盧泰愚(ノ・テウ)大統領が来日した際の宮中晩さん会で、天皇陛下が「痛惜(つうせき)の念」と述べたことにも言及しながら
「このような単語一つを言いに来るのであれば、来なくていい」
と突き放した。朴氏は、この発言の4日前に歴代韓国の大統領としては初めて竹島(韓国名・独島)上陸を強行したこともあって、日韓関係は一気に冷え込むことになった。2015年末に「慰安婦問題」をめぐる日韓両政府の「合意」はあったが、韓国の国民感情の溝が完全には埋まっていない現実もある。
しかし、天皇陛下と韓国をめぐるエピソードは多く、韓国メディアが好意的に報じることもある。
天皇陛下は2001年12月の天皇誕生日を前に開かれた記者会見で、
「私自身としては、桓武天皇の生母が百済の武寧王の子孫であると続日本紀に記されていることに、韓国とのゆかりを感じています」
と、「ゆかり」という言葉で天皇家のルーツに言及。05年のサイパン訪問では「太平洋韓国人追念平和塔」に立ち寄った。JR新大久保駅のホームに転落した乗客を救おうとした韓国人男性が犠牲になった事故をモチーフにした映画「あなたを忘れない」(07年)の試写会には両陛下も出席している。16年7月4日には、日韓国交正常化50周年を記念した特別展「ほほえみの御仏―二つの半跏思惟像(はんかしゆいぞう)―」を鑑賞したばかりだ。
14年9月にも週刊誌「女性自身」は、外務省の鶴岡公二総合外交政策局長(当時)が両陛下に対して「ご進講」した際、天皇陛下が
「いつ私たちが、かの地を訪れることができるようになればよいのですが。これからも日本と韓国が友好な関係を保てるよう願っています...」(原文ママ)
などと述べたと伝えている。そういったこともあって、韓国メディアは8月9日にも
「彼(天皇陛下)は、その(李明博大統領の発言の)後も『皇后と一緒に韓国を訪問したい』という意思を表明した」(東亜日報)
などと「天皇陛下の訪韓の意向」を既成事実として報じており、韓国側の関心を高める一因になっている。