昭和天皇逝去時の世相踏まえ、国民の暮らしへの影響も懸念
続けて陛下は、天皇が深刻な状態となった場合「これまでにも見られたように、社会が停滞し、国民の暮らしにも様々な影響が及ぶことが懸念されます」と指摘。具体的には
「これまでの皇室のしきたりとして、天皇の終焉に当たっては、重い殯(もがり)の行事が連日ほぼ2か月にわたって続き、その後喪儀に関連する行事が、1年間続きます。そのさまざまな行事と、新時代に関わる諸行事が同時に進行することから、行事に関わる人々、とりわけ残される家族は、非常に厳しい状況下に置かれざるを得ません」
とされ、
「こうした事態を避けることは出来ないものだろうかとの思いが、胸に去来することもあります」
と、心境を吐露された。これは、父である昭和天皇が1988年に闘病生活に入って1989年1月に逝去されるにあたって日本社会に広がった「自粛ムード」や、その後即位された現天皇陛下ご自身の体験に基づくものと思われる。
陛下は「天皇は国政に関する権能を有しない」という憲法の規定を踏まえて制度に関わる具体的な言及は最後まで避けたが、生前退位の意向を極めて強くにじませたものといえ、「国民の理解を得られることを、切に願っています」と結んだ。
なお、生前退位を行うには皇室典範の改正が必要となるほか、新元号や退位後の陛下の敬称など、新たに決めるべきさまざまな問題が出てくる。
安倍晋三首相は陛下のビデオメッセージを受け、
「私としては天皇陛下が国民に向けてご発言されたことを重く受け止めております。天皇陛下のご公務のあり方などについては、天皇陛下のご年齢やご公務の負担の現状に鑑みるとき、天皇陛下のご心労に思いを致し、どのようなことができるのかしっかり考えていかなければならないと思っています」
とコメントした。