「1人年3500万円」の新薬 医療財政を破綻に追い込む?

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医師会、製薬会社にはそれぞれの思惑

   厚労省はさらに、医療保険が適用される病気が増えて、市場規模が急拡大した場合は、2年に1度の薬価改定を待たず、即座に薬価を見直す仕組みを検討する。これもオプジーボが念頭にある。オプジーボは、患者の見込み数が470人と少数だった皮膚がんで承認されたために1人年間3500万円という高額になったが、翌年に患者数の多い肺がんに適用が広がり、医療財政への影響が一気に問題になったからだ。

   ただ関係者の立場は簡単には一致しそうもない。政府が、高齢化で医療費が膨らむ中で薬剤費を少しでも抑えたいと考えるのは当然として、日本医師会は薬剤の価格の引き下げの必要は認めつつも、「診療報酬改定時に薬価の引き下げ分を診察料などに回すべきだ」と、医療費全体の考え方では違う立ち位置にある。

   製薬会社は当然、価格引き下げに反対で、「開発コストが回収しにくくなり、技術革新を阻害する」と訴える。

   また、どのように「使い過ぎ」を抑えるかという現実論になると、高いハードルが立ちはだかる。オプチーボの場合、効果がある患者は2~3割とされ、それをいかに判定し、投与の見送りや中止をするかが大きなポイントとされるが、専門家は「投与を始める前に効果がある患者を識別する指標を探しているところで、すぐには確立できない」と指摘する。

   健康はすべての人の願い。一方で、無尽蔵に金があるわけでもない。「75歳以上の高齢者は高額薬剤による延命治療は控えるしかない」との声がある一方、高額薬剤を使って早期に治れば、長期入院したり、繰り返し高度な手術を受ける、あるいは効果の高くない抗がん剤などを投薬し続けるといった費用が節約できる面も総合的に考えるべきだとの意見もある。

   高額薬剤の価格を下げていく大きな方向性はできたが、対立する考え方がせめぎ合う中で、いかに大方の納得感ある対応策をまとめるか、難しい議論が続く。

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