画期的な治療薬の開発でC型肝炎が治るようになり、会場には笑顔が増えていた。2016年7月23日、東京で開かれた「世界・日本肝炎デーフォーラム」での印象だ。日本肝臓病患者団体協議会が主催、今年が5回目になる。
世界保健機構(WHO)は10年、ウイルス性肝炎のまん延の防止、感染者への差別・偏見の解消などを図るため、7月28日を「世界肝炎デー」と決めた。この日はB型肝炎ウイルスの発見でノーベル賞を受けたB・ブランバーグ博士の生まれた日だ。
瀬川瑛子さんが啓発に協力
厚生労働省は11年、同日を「日本肝炎デー」とも決め、積極的に啓発活動を展開することにした。フォーラムは12年7月28日を第1回とし、毎年7月に東京で開かれている。
今回のフォーラム第一部では、厚生労働省や政党、患者団体代表のほか、スペシアル・サポーターを引き受けた歌手の瀬川瑛子さんが挨拶した。瀬川さんの母親はB型肝炎感染者で、3人の子どものうち、瀬川さんの姉だけがウイルスキャリアになった。彼女は現在、人工透析をし、糖尿病と闘っている。瀬川さんは姉を通して肝炎の現状を知り、啓発活動に協力することになったという。
フォーラム第二部では、九州で活動する2人の医師が登壇した。八橋弘・長崎医療センター臨床研究センター長は、C型肝炎ウイルスが薬で排除できるようになったものの、患者の留意事項として、ウイルス消失後でも発がんやコレステロール上昇がある、二重感染者は、残っているB型ウイルスが活性化する可能性がある、と指摘した。
また、江口有一郎・佐賀大学肝疾患センター長は、17年連続で肝臓がん死亡率が全国1位の佐賀県あげての「ワースト1位返上プロジェクト」の取り組みを紹介した。江口さんは患者への直接コミュニケーション活動が最も重要と考えた。ウイルス検診率向上のためには、病院で待つよりもと、医師、看護師、保健師らが農業祭やのど自慢大会など人の集まる場所に出向いて採血した。また、NHKと民放テレビでのキャンペーンやコマーシャルをくり返し、肝炎コーディネーター制度を充実し、紹介ビデオの作成など思い切った啓発活動を展開した。調査では、県民の肝炎への関心や知識は確実に高まっており、受診にはかかりつけ医の勧めが最も有効とわかった。自信に満ちた江口さんの講演ぶりから、目標達成が間近いことがうかがわれた。(医療ジャーナリスト・田辺功)