甲子園球場で起きた今回の「女子マネジャーの練習手伝い制止」をめぐる騒動が、100年以上の歴史を誇る高校野球の「しきたり」を変えるかもしれない。
全国高校野球選手権大会を主催する朝日新聞社が、性別に関係なく練習参加ができるような対策を「いま一度検討することを含め、幅広く考えていきたい」との署名記事を紙面に掲載したためだ。朝日とともに大会を主催する日本高等学校野球連盟(高野連)は、この指摘をどう受け止めるのか。
「性別に関係なく練習補助員を務められるよう」
朝日新聞は2016年8月4日付朝刊(東京最終版)の第3社会面に、「女子の練習参加めぐり議論」などと題した記事を掲載した。大分高校の女子マネジャーが甲子園球場での練習参加を制止され、グラウンド外へと「退場」させられた騒動について詳しく報じたものだ。
この騒動は8月2日、大会開催前に甲子園球場で行われた公式練習で起きた。高野連によれば、「女子マネジャーが本大会で練習補助に参加したのは初めて」。出場校へ配布している手引の中で、練習補助員は「男子部員に限る」と明記されているため、制止・退場は、この規定に従った対応だと説明している。
朝日記事では、大会規定に対する批判的な意見がネット上で相次いだことを紹介。元陸上選手の為末大さんが2日のツイッターで「世の中と最もずれている競技になりつつある」と苦言を呈したことや、一般ユーザーが寄せた「男尊女卑思考をいつまで引きずるのか」という厳しい声を掲載した。
さらに、安藤嘉浩・編集委員の署名記事(「視点 安全策 幅広く考えたい」)では、高野連に加盟する全ての学校が「男女の区別なく活躍の場を用意したいという思い」を抱いているだろう、とする一方で、女子部員が練習補助員としてグラウンドに立つことには「安全面への懸念がどうしても拭いきれない」とも指摘。その上で、今回のケースで問題視されているのは「性別で一律に区切っていること」だと断じ、「性別に関係なく練習補助員を務められるよう、万全の安全対策を講じられないか。いま一度検討することを含め、幅広く考えていきたい」と結論付けた。
高野連事務局長「規定を変更するかどうか議論を深める必要」
朝日新聞側が発信したこの「メッセージ」を、高野連はどう受け止めているのか。竹中雅彦事務局長は8月5日、J-CASTニュースの取材に対し、
「今回の練習補助員をめぐる一件では、朝日新聞に限らず、数多くの意見を頂戴しています。こうした意見を無視することはできませんので、規定を変更するかどうか議論を深める必要があると考えています」
と話した。女子部員の「練習参加」を認めるように規定が変更される可能性については、「現段階では何とも答えられない」とした。
今回の朝日記事が今後の決定に影響を与えるか、という記者の質問に対しては「一切ありません」と断言。ただ、規定の変更を最終的に決定する理事会のメンバーには「朝日新聞社の人間も含まれます」という。