セ・リーグを独走する広島。このチーム、実は選手を発掘する能力が高い。その証が名球会で最多のメンバーを数えることである。
今シーズンの広島は強い。と同時に華やかである。真っ赤なユニホームが燃えに燃えている。
名球会メンバー「最多」
2016年8月2日、39歳の新井貴浩がヤクルト戦で通算300号ホームラン(42人目)を放ち、大きく報じられた。
「記念の本塁打を打った試合に勝ててうれしい」
野球少年のように喜んだ。この新井は全力プレー、明るさが持ち味で、快進撃する今季の広島を引っ張る原動力であり、象徴ともなっている。
今シーズンは新井イヤーといってもよく、個人記録でも4月26日には2000安打を達成。スーパースターの集まりである日本プロ野球名球会の会員となった。
名球会会員の資格は、打者は2000安打、投手は200勝、250セーブ達成者で、日米通算も認めている。現在、60人で、内訳は投手16人、野手44人と名誉会員(故人)7人。
広島は新井の後、黒田博樹が7月23日に日米通算200勝をマークし、派手に騒がれたことは記憶に新しい。「男気黒田」の快挙とあって、広島全体が盛り上がった。
名球会のメンバーを見ると、広島に入団した選手が8人もおり、最多を占めている。これは意外と知られていない。
新井、黒田のほか、投手で北別府学、打者は山本浩二、衣笠祥雄、野村謙二郎、前田智徳、金本知憲(阪神時代含む)。山本は、14年末から名球会の理事長である。
隠れた素質を引き出すために激しい練習を
彼らのプロ入りのときを振り返ってみると、いずれも大騒ぎされてはいない。山本にしても法大の同期の田淵幸一(阪神)や明大の星野仙一(中日)の陰に隠れた存在だった。
「広島は財政的に豊かではないから、人気選手を獲得するのに厳しい。目立たない選手の素質を見抜いて補強している」
広島の歴代監督の共通した言葉である。
セ、パ2リーグでスタートした1950年、セに加盟。財政難は長く続き、監督が樽募金を募って選手の給与に充てたという苦悩のエピソードがある。従って弱小球団の不遇を味わった。
それを克服したのがスカウトの働きだった。
「金がない。武器は足と誠意。無名の選手を訪ねて全国を歩いた」
ベテランスカウトの述懐である。こうして獲得したのが名球会の選手であり、現在の選手たちだ。隠れた素質を引き出すために激しい練習を課しているのは球界では有名である。
数年前、広島は「カープ女子」で話題を集めた。今、それに応えるように選手が注目を集めている。夏の終わりには、優勝へのマジックナンバーが出るだろう。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)