隠れた素質を引き出すために激しい練習を
彼らのプロ入りのときを振り返ってみると、いずれも大騒ぎされてはいない。山本にしても法大の同期の田淵幸一(阪神)や明大の星野仙一(中日)の陰に隠れた存在だった。
「広島は財政的に豊かではないから、人気選手を獲得するのに厳しい。目立たない選手の素質を見抜いて補強している」
広島の歴代監督の共通した言葉である。
セ、パ2リーグでスタートした1950年、セに加盟。財政難は長く続き、監督が樽募金を募って選手の給与に充てたという苦悩のエピソードがある。従って弱小球団の不遇を味わった。
それを克服したのがスカウトの働きだった。
「金がない。武器は足と誠意。無名の選手を訪ねて全国を歩いた」
ベテランスカウトの述懐である。こうして獲得したのが名球会の選手であり、現在の選手たちだ。隠れた素質を引き出すために激しい練習を課しているのは球界では有名である。
数年前、広島は「カープ女子」で話題を集めた。今、それに応えるように選手が注目を集めている。夏の終わりには、優勝へのマジックナンバーが出るだろう。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)