1994年の改正で「努力義務」に変わった理由
かつては、一部の予防接種は義務付けられており、受けなかった場合の罰則が設けられていた。しかし、1994年の改正で「努力義務」に変わり、必ずしも受ける必要はなくなった。法律改正の理由の一つは、乳幼児は免疫力が低く、ワクチンによって逆に感染症にかかってしまうケースが複数発生したことを受け、接種するか否かの選択の余地を与えたためだ。
ワクチンは、毒性を弱めているとはいえ、病原体を投与して免疫力を高めようとするもの。発熱や注射部位の腫れ、関節痛といった副反応が出る場合もあり、受けることによるリスクもゼロではない。前出の、ツイッターに投稿した小児科医によれば、感染症にかかるこうしたリスクを懸念して忌避する親もいるという。
「予防接種をしないことのリスクを重症例の経験が無い人に伝えるのは難しい所ではあります」
と頭を悩ませてもいる。
それでも、接種対象者の定期接種実施率はかなり高い。厚生労働省の発表によると、最新の2013年度は、四種混合(ジフテリア、百日せき、破傷風、ポリオ)の99.8%、麻疹の95.5%、風疹の95.5%をはじめ、A類疾病はほとんどが9割以上だ。
また、同年度の副反応の報告件数は、四種混合は実施者数103万9952人に対して73件。他の定期接種も、実施者100万人前後に対し、副反応報告はおおむね50~200件となっている。
不安な人には、リスクの程度をみるために予防接種前に記入する「予診票」をもとに、医師に相談できる。定期接種の場合、万が一重篤な副反応が出た場合には予防接種法にもとづく「予防接種健康被害救済制度」により、給付金が支給される。