千代の富士の命を奪った「すい臓がん」 生存率7%「最悪がん」でも予防できる

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   元横綱千代の富士の九重親方(本名・秋元貢=あきもとみつぐ)が2016年7月31日、すい臓がんのため東京都文京区の東京大学付属病院で死去した。61歳。2015年9月、すい臓がんの手術を受けたことを明らかにし、闘病生活を送ってきた。亡くなる1か月前の名古屋場所には部屋の稽古に姿を現し、力士らに声をかけたが、周囲は急激にやせた姿に驚いた。

   現役時代は、身長183センチ、体重125キロ前後の小兵ながら大型力士を豪快に投げ飛ばす相撲が人気を呼んだ。精悍な顔つきと鍛えあげた筋肉で「ウルフ」と呼ばれた大横綱も病魔には勝てなかった。すい臓がんとはいったいどんな病気なのか。

  • 「ウルフ」と愛された千代の富士関(写真:山田真市/アフロ 1987年5月14日撮影)
    「ウルフ」と愛された千代の富士関(写真:山田真市/アフロ 1987年5月14日撮影)
  • 「ウルフ」と愛された千代の富士関(写真:山田真市/アフロ 1987年5月14日撮影)

「発見しにくい」「転移しやすい」「治療が難しい」

   すい臓がんは、「早期発見しにくい」「転移しやすい」「治療が難しい」「生存率が低い」と悪条件が4つもそろい、「最悪のがん」と呼ばれる。国立がん研究センターの最新の統計によると、すべてのがんの「5年生存率」の平均が62.1%なのに、すい臓がんは7.7%と、あらゆるがんの中で最も低い。2番目に低い胆のう・胆管がんが22.5%だから、いかに群を抜いて悪質かがわかる。ちなみに「10年生存率」になると4.9%まで下がる。

   これまでに多くの著名人が比較的若い年齢で命を落としてきた。2016年1月、ジャーナリストの竹田圭吾さん(享年51)が亡くなったが、死の直前までテレビ出演や本を通じすい臓がんとの闘病生活を公開、話題になった。ほかにも次の方々が亡くなっている(敬称略・カッコ内は享年)。

   歌手青江三奈(54)、実業家スティーブ・ジョブズ(56)、俳優パトリック・スウェイジ(57)、歌舞伎俳優坂東三津五郎(60)、安倍晋三首相の父親安倍晋太郎(67)、元巨人選手土井正三(67)、元大関大麒麟将能(69)、ジャーナリスト黒田清(70)、俳優夏八木勲(74)......。

   なぜ、これほど悪質ながんなのだろうか。日本消化器病学会などの「すい臓がん」のウェブサイトによると、すい臓は長さ20セントほどの小さな臓器だ。食物の消化を助ける「すい液」の分泌と、インスリンやグルカコンなど血糖値を調節するホルモンの分泌という2つの大事な役割を果たす。

   すい臓は胃の裏側の体の深部にあり、他の臓器に囲まれているため、がんが発生してもレントゲン検査などでは発見しにくい。また、すい臓がんの多くは中を通る「すい管」という部位に発生するが、すい管はリンパ管や血液とつながっているため、がん細胞が周辺の臓器や体の遠い部位まで転移しやすい。

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