2016年7月29日、日本銀行は金融政策決定会合を開き、追加の金融緩和を決めた。追加緩和はマイナス金利政策の導入を決めた16年1月以来、6か月ぶり。株価指数連動型上場投資信託(ETF)の購入額を年間3.3兆円から6兆円に増額する。
政府と日銀が連携して「デフレの完全克服」を目指す姿勢をアピールしたものの、市場の期待よりは貧弱だったため、円ドル相場や株価は激しく乱高下し、個人投資家は手の打ちようがない1日になったようだ。
市場は日銀の追加緩和を既定路線と見ていた
日銀が決めた追加の金融緩和は、現行の「マイナス金利」「量的・質的金融緩和」をさらに推し進め、株価指数連動型上場投資信託(ETF)の年間買い入れペースを3兆3000億円から6兆円に倍増するというもの。
不動産投資信託(REIT)の買い入れ額は900億円を維持。また、日銀の当座預金の一部に適用するマイナス金利の幅を現在のマイナス0.1%を据え置くほか、長期国債の買い入れ額も年間80兆円に据え置いた。
日銀は「2%の物価上昇」を目指して2013年から大規模な金融緩和を続けている。しかし、最近は物価の弱含みや消費の低迷で、政府と日銀が掲げる「デフレ脱却」が困難になりつつあり、アベノミクス限界説が指摘されている。政府は2016年8月2日に大規模な経済対策を決めている。
政府は、日銀が政府と連携して追加の金融緩和に踏み込むことを強く期待しており、メディアも日銀の追加緩和の実施が既定路線のように報じていた。しかし、今回の日銀の決定は市場の期待からは遠かったようだ。
第一生命経済研究所経済調査部の主任エコノミスト、藤代宏一氏は「ETFの増額であれば、政府の経済対策に呼応するというメッセージを発信することができますし、少なくとも『ヤル気』はアピールできます。今回の決定は、日銀の金融緩和の限界を感じさせつつも、できる限りのことはやるという姿勢を強調することに、その目的があったように思います」と見る。
また、外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長も、「市場から見れば、日銀は『ゼロ回答は避けた』との評価。とりあえず、できることに手をつけたといった感じでしょうか」とみている。