高血圧症治す「利尿剤」でダイエット 本来の目的と違う使用に潜む危険

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   利尿剤「フロセミド」(商品名:ラシックス)を使ったダイエット法がインターネット上で複数報告されている。尿を出して体内の水分を減らすことでやせる、という理屈だ。

   だが、ラシックスは本来、医師の処方のもと服用する医療用医薬品であり、むくみを解消して血流量を減らすことで高血圧症を治すのに用いられる。ダイエット目的での服用は、本来の用途から外れている。

  • やせる目的で医薬品の利尿剤を飲んでいいの?(写真はイメージ)
    やせる目的で医薬品の利尿剤を飲んでいいの?(写真はイメージ)
  • やせる目的で医薬品の利尿剤を飲んでいいの?(写真はイメージ)

「これほんと危ないから気をつけて」

   コスプレイヤーを名乗るツイッターユーザーが、ラシックスを使ったダイエット法の存在を挙げて「これほんと危ないから気をつけて下さい...!!」と訴えたのは2016年7月19日。コスプレイヤーたちの間で「オススメ美容法」として広まっているらしく、投稿者が引用した宣伝文句では「顔や全身すっきりするし胸が減るから男装もしやすくなります」とうたわれている。

   しかし、投稿者は

「確かに尿が沢山出て水分は減るからその通りなんだけど低カリウム血症っていうのになって命に関わる」

と危険性を指摘しており、他のユーザーからも「死にますよこれ」といった反応があった。

   この投稿に限らず、「利尿剤ダイエット」は数年前から存在しているようで、ダイエット法紹介サイトでも記事にしたものが複数ある。

   例えばあるネットメディアでは、利尿作用によって老廃物や余分な水分が排出され、むくみ解消になるとしてラシックスを紹介。太りやすい体質を作ってしまうむくみの解消はダイエットに非常に有効だとして、利尿剤ダイエットを勧めている。

   別のネットメディアでは、医薬品である利尿剤には倦怠感や貧血、嘔吐(おうと)といった副作用を生じさせる危険性があることを指摘しながらも、慢性的なむくみを持つ人にはダイエット効果が期待できる、という記事を掲載している。

   一方で、「とても危険だったダイエット方法」として実体験を書いた個人ブログもある。太っているのはむくみのせいだと思っていたところ、利尿剤ダイエットを知り服用を始めた。尿を頻繁に出し、のどが渇いてもやせるために水は極力飲まずにいたが、徐々に体調が悪くなっていった。食欲不振や倦怠感に悩まされ、脱水症状にもなった。一時的にやせたが、通常の飲食に戻したらリバウンドしてしまい、「根本からやせることは全く出来ない」と後悔の念をつづっている。

副作用に筋力低下、不整脈、アナフィラキシー

   ラシックスは、高血圧症や腎性・肝性浮腫、尿路結石排出に効果がある医療用医薬品だ。国内で手に入れるには医師の処方箋が必要で、医師の指導のもとで服用しなければならない。だが、海外の製薬会社から個人輸入すれば処方なしで入手でき、個人輸入代行業者も存在する。

   副作用については、ラシックスを製造する国内の各製薬会社がウェブサイトで公開している添付文書に明記されている。投稿者が言う低カリウム血症もその一つだ。尿量が増えることでカリウムの排泄(はいせつ)量も増え、そのため筋力低下や不整脈を引き起こすおそれがある。副作用は他にも貧血、食欲不振、脱力感のほか、アナフィラキシーショックや血小板減少、間質性肺炎のような重症化するものまで複数ある。こうした症状が出たら投与を中止し、適切な処置を行うよう記載している。

   ラシックスの添付文書には、ダイエットや痩身を思わせるような効能・効果は書かれていない。製薬会社の業界団体「日本製薬工業協会」の審議会が策定した、医薬品添付文書の作成要領は、

「効能・効果に関わる情報については、承認の範囲外の記載をしないこと」

と定めている。承認の範囲外に副次的な効果が認められる場合は

「『参考情報』として(効果・効能と)明確に区別して記載し、効能・効果を誤解させるような表現をしないこと」

という注意もある。ラシックスは「参考情報」にもダイエットや痩身に関する記述はない。

   ダイエット目的の服用について、ラシックスの販売や安全性情報の収集・提供を行う日医工(富山市)は、J-CASTヘルスケアの取材に対し、「厚生労働省に承認された適応症(その医薬品によって治療効果が期待できる病気)以外の内容になりますので、お答えいたしかねます」とのこと。医薬品メーカーでラシックスを製造するサノフィ(新宿区)も同様の答えだったが、副作用については「添付文書に記載の副作用はもちろん起こり得ます」と話した。

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