IOCがビビった「冷戦復活」 露ドーピング問題と国際政治

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政治抜きでは成り立たないスポーツ国際大会

   小生は、通信社の記者として1980年のモスクワ五輪を取材することになっていたが、ソ連がアフガニスタンを攻め込んだとして西側諸国が大会をボイコットしたため取りやめとなった。84年のロサンゼルス大会は特派員として取材にあたった。

   このときは東側諸国が報復処置として大会をボイコットしたが、ルーマニアだけは出場。モントリオール、モスクワ大会で金メダルを獲得したあと引退していた、同国体操女子のコマネチの亡命騒ぎが注目されるなど、冷戦の余波が陰を落とした。

   モスクワ大会のボイコットはまさしく政治判断で、日本選手団は涙の抗議を政府に行った。このときもっとも気の毒だったのは男子マラソンの瀬古利彦だった。全盛期で出場していれば金メダルも十分ありえた。

   モスクワ、ロサンゼルスの2大会を含むおよそ10年間は、冷戦の闇に包まれていた。今、その復活がありうる状況で、IOCは、五輪を理由にされてたまるか、との思いが強かったのではないか。

   ルールに従うスポーツと、ときには無理を通す政治。しかし、国際大会は政治抜きでは成り立たない。みんなその不条理を知ることである。

(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)

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