神奈川県相模原市の事件で惨殺された障害者19人の名前を県警が非公表としたことについて、「事件の重みを伝えられなくなる」と新聞記者らからツイッターで疑問や批判が出て論議になっている。
「遺族から強い要望があった」として、神奈川県警が被害者を匿名で発表したことから、各メディアでは、実名など被害者の詳しいことは報じられていない。
「取材して事件の重みを伝えられなくなる」
新聞各紙では、性別と年齢だけを一覧表にして列挙する程度だ。遺族への取材も難しいのか、その様子なども紙面でほとんど触れられないままになっている。
こうした状況について、各メディアの記者らからは、様々な意見が出始めた。
朝日新聞のある女性記者は、2016年7月27日のツイートで、県警が被害者の名前を伏せたことに対し、こう批判的に書き込んだ。
「匿名発表だと、被害者の人となりや人生を関係者に取材して事件の重さを伝えようという記者の試みが難しくなります」
一方、共同通信の男性記者はツイッターで、被害者の名前を報じるべきかについて「深い議論が必要」だとしながらも、「『この人たちを見てはいけない、見ないようにすべきだ』とのメッセージになってしまうことを憂慮する」と意見を述べた。
映像ジャーナリストの綿井健陽さんも、同様な「異常さ」を感じるとし、「ひとりひとりの死がない」と大量殺りくの恐ろしさを説いた詩人の故・石原吉郎さんの言葉をツイッターで紹介した。そのうえで、「相模原の事件で殺害された人たちの名前の公表について、いろいろ考えています」と複雑な心境を漏らしている。
しかし、ネット上では、報道被害に対するマスコミ不信の声が大きい。