神奈川県相模原市で障害者19人が刺殺された事件で、植松聖(さとし)容疑者(26)は事件前から不可解な言動を繰り返している。極めて残忍な事件であるだけに、精神病院への措置入院歴などから、刑事責任能力がないとみなされる可能性はあるのか、注目が集まっている。
不敵な薄ら笑みを浮かべながら、詰めかけた報道陣を見回して...。植松容疑者は2016年7月27日朝に送検されたが、テレビカメラには、こんな姿が映っていた。
「職員の少ない夜勤に決行」と事前に計画を明かす
知的障害者施設「津久井やまゆり園」で26日未明に起きた事件は、あまりにも冷酷無比だった。報道によると、元職員として知った警備のすきを突いて侵入し、職員を縛って部屋のカギを奪い、45人の首を狙って次々に切り付けた。犯行はわずか1時間のうちに行われ、移動時間を考えると、1分に1人のペースで犯行を続けていた計算になる。
それも、事前の計画通りであることも分かってきた。
植松容疑者は、2月14日に衆議院で大島理森議長あてに持ち込んだ手紙で殺害予告し、「職員の少ない夜勤に決行」「見守り職員は結束バンドで身動き、外部との連絡をとれなくします」などと書き込んでいたのだ。
もっとも、手紙では、障害者の安楽死を求め、その理由として、世界の経済や平和のためになるなどとしたり、UFOを2回見たと明かしたりするなど、異常なところもある。施設でも殺害をほのめかすなどしたため、警察から連絡を受けた相模原市が19日、精神保健福祉法に基づいて植松容疑者を措置入院させていた。
とはいえ、手紙を見ると、犯行後のことまで計算していたような文面も見られる。「逮捕後の監禁は最長で2年まで」「心神喪失による無罪」などと大島議長に求めていたからだ。
「ノーマルでないことを認識、判断能力あったのでは」
植松聖容疑者は、措置入院からわずか12日で退院しているものの、尿から大麻の陽性反応が出て、「大麻精神病」「妄想性障害」と医師から診断されていた。
こうした経緯から、事件当時に「心神喪失」などとみなされ、植松容疑者の刑事責任能力が問われないことはありうるのか。
元東京地検検事の落合洋司弁護士は、J-CASTニュースの取材に対し、報道内容が錯綜しており、現時点の情報だけでは責任能力について断定的には言えないとしながらもこう指摘する。
「容疑者は、犯行を計算して計画し、冷静に行動しているようですね。精神病患者なら自分が病気であると思っていない人が多いですが、ノーマルでないことを認識しており、判断能力があったとも考えられます。ただ、最終的には、精神鑑定の結果から、完全責任能力か限定責任能力かなどについて判断されると思います」
ツイッターやニュースのコメント欄を見ると、植松容疑者に厳しい声が多く、
「これだけ計画性あるのに心神喪失はムリだろ」
「極刑以外考えられない」
などといった意見が書き込まれている。