ワクチンの接種後に「副反応」としてけいれんなど様々な症状が出たとして子宮頸(けい)がんワクチンの接種勧奨が3年間中止されたままだ。
大阪大学の研究チームは、ワクチン接種の再開が遅れると、現在13~17歳の少女が20歳になった時に、子宮頸がんの原因になるウイルスに感染するリスクが他の年代に比べ、約2.5~3倍と突出して高くなるという研究を発表した。
年間約1万人が発症、約3000人が死亡する子宮頸がん
この論文は英医学誌「ランセット・オンコロジー」(電子版)の2016年7月17日号に掲載された。
子宮頸がんは国内では年間約1万人が発症、約3000人が命を落としている。大半がHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染によって発症するため、思春期に予防ワクチンを接種すると防ぐことが可能とされる。日本では2010年度から摂取の公費助成、2013年度から12~16歳を対象に定期接種を国が強く勧奨する制度が始まったが、全身の痛みやけいれんなど様々な症状が出る報告が相次いだ。このため、国はわずか2か月で勧奨を一時中止、事実上、接種する人がゼロの状態が続いている。
先進国でワクチン接種を推奨していないのは日本だけのため、世界保健機関(WHO)が日本政府を名指しで非難、国内でも小児科学会など17学術団体がワクチン接種後の診療体制などが整備されたとして、積極的な接種を推奨するとの見解を発表した。一方、ワクチン接種によって後遺症に苦しむ患者団体などが再開に反対、接種の中止状態が続いている。
生まれた年度によってワクチン接種率に大きなバラツキ
このため、生まれた年度によってワクチン接種率に大きなバラツキがある。
研究チームは、1993~2008年度の女性が20歳時にHPVウイルスに感染するリスクを生まれた年度ごとに算出した。その結果、ワクチン接種の再開が1年遅れるごとに感染リスクに大きな差が出ることを明らかにした。特に一番影響が出やすいのが2000~2003年度生まれの女性(現在13~17歳)で、2020年まで再開が伸びたと仮定すると、接種の助成が始まった世代である1995~1999年度生まれの人たちに比べ、感染リスクは約2.5~3倍高くなる。
研究グループでは「生まれた年による子宮頸がん発症リスクの格差を最小限にとどめるには、2016年度中の再開がのぞましい。もし、再開が来年度以降にのびる場合は、中止期間中に12~16歳だった女子も摂取対象に含めるべきだ」とコメントしている。